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『喰う寝るふたり 住むふたり』第5巻 日暮キノコ 【日刊マンガガイド】

2015/04/08


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『喰う寝るふたり 住むふたり』第5巻
日暮キノコ 徳間書店 \562+税
(2015年3月20日発売)


同棲8年目のカップルの日常を男女両目線によるザッピング形式で描き、共感を集めてきた本作も、ついに最終巻!

家事の役割分担、お金に対する価値観、それぞれの交友関係、セックスレス、結婚、子どもやペットがほしいかほしくないか……などなど、ある程度つきあいの長い、ひとつ屋根の下に住む(でも結婚はしてない)カップル特有の諸問題にまつわる、2人のエピソード(彼氏は彼女とゆっくり晩酌を楽しみたいとビールを買って帰ったのに、彼女はまたこんな無駄使いしてとキレるとか)は、超リアルであるある感満載!

現実ではこういう時、なかなか冷静に相手の気持ちをおもんばかれないものだが、だからこそのザッピング形式なわけで。
あの時は考えもしなかったけれど、ホントは相手はこう思ってたのかもなあ……なんて、我が身をふり返って考え(反省?)させられると同時に、著者の観察眼の鋭さに感嘆せずにいられない。

ときに楽しく盛り上がり、ときに対立し、ときにすれ違いながらも、上村一夫『同棲時代』と比べると、驚くほど平和でほのぼのした日々を送る2人は、だれの憧れでも真似でもない、2人らしい関係を模索し、しっかりと育んでゆく。

ときには本音で話しあうけど、すべてを吐露しあうわけでもない。

そんな余白も残した、無理のない信頼で結ばれた彼らの姿を見ていると、現実はなかなかそううまくはいかないっスよ……と思いながらも、2人の他人同士が一緒に暮らすことに必要なのは、愛でも忍耐でもなく、相手の気持ちをおもんばかる「想像力」なのだと、改めて気づかされる。

もっともっと、この2人を見ていたかった! という思いもありながらも、「いろいろありつつも続いてゆく日常」を意外な人物(!?)の視点で描いたラストは、じつにこのマンガらしくて、思わず拍手を送りたくなってしまった。

ちなみに日暮キノコは「モーニングツー」で新連載『ふつつか者の兄ですが』がスタート。こちらも期待!



<文・井口啓子 >
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて『おんな漫遊記』連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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