『ステラとミルフイユ』第3巻
渡辺カナ 集英社 \400+税
(2015年3月25日発売)
厳しい父への反発心から、高校進学を機に家を出てひとり暮らしを始めた葉山銀河。
他者を拒絶して生きていたが、同じアパートの住人たち、とりわけとなりの部屋に住む年上の女性、明るい椿さんと触れあううちに変化をとげていく銀河の成長ぶりが一段とまぶしい最終巻。
椿さんにひかれていくなかで、人を想うこと、人と交わるの喜びを感じ……そして、そのことがいかに自分の力にもなるかが、銀河の表情一つひとつからまざまざと伝わってくる。
自分の恋心以上に椿さんの幸せを想い、彼女の背中を押す銀河の男らしいこと! この恋の行方は?
また、父から逃げることをやめ、正面から向きあうことにした銀河のこれからは……?
渡辺カナの作品は、物語が終わった後も「この登場人物たちにまた出会いたい」と思わせる魅力に満ちている。
もう少し大人になった銀河と、椿さんたちの続きの物語をいつか読んでみたい。そんな気持ちでいっぱいになる読後感だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」