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『エロゲの太陽』第2巻 はまむらとしきり(作) 村正みかど(画) 【日刊マンガガイド】

2015/04/22


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『エロゲの太陽』第2巻
はまむらとしきり(作) 村正みかど(画) 小学館 \552+税
(2015年3月30日発売)


ズバリ、エロゲメーカーの現場を舞台とし、その内幕を描く作品。

秋葉原にある社員が女の子ばかりのエロゲメーカー「エリコム」に、とある事情から主人公がただひとりの男性スタッフとして転がりこむことに……と、その設定だけ聞くとこれ自体がいわゆる“ハーレムもの”のエロゲ? と思われるかもしれないが、じつはまったくそういうマンガではない。

主人公の神田太陽は、若くして大手商事会社の課長職にまで上りつめた人物。部下の失態を「努力が足りない」「自己責任」とつき放すような、自分にも他人にも厳しい男である。
しかし、早すぎる出世を上司に疎まれ、策略によってつめ腹を切らされそうに……と、のっけから思いのほかハードなストーリーなのだが、行くあてをなくして運営を手伝うことになった「エリコム」が直面する問題もまた、シリアスそのもの。

最初のエピソードこそ「せまる納期を前に、世界観やテイストがバラバラの女の子CGだけでどうする?」という問題を「全員にチンコを描き足して世界観を統一」というすばらしい(?)方法で解決するという爆笑モノの解決だったが、以降はクリエイターの夢を喰い物にするブラック企業や、あえて炎上商法を狙う悪徳プロデューサー、さらに詐欺まがいの行為をくり返す業界ゴロなどなど、読んでいて本当に胃が痛くなるほどの深刻な事案が次々描かれる。
これは、読む人によってはヘタなホラーやサスペンスよりもおそろしいマンガなのである。

何が読んでいて怖いかって、「夢」の残酷さが容赦なく描かれていること。
夢を利用されて過労死寸前まで働くシナリオライター、名作タイトルを生み出しながら経営者の夢破れて死を覚悟するクリエイター、かつての夢を追って危ない橋を渡る業界ゴロ……。
もちろん、マンガ的にデフォルメはされているのだが、そのリアルさは原作者のはまむらとしきりが実際にエロゲ業界に身を置き、会社を潰したという経験もあってのことだというのは想像に難くない。
どれだけ生々しい内容なのかというのは、単行本の表紙をめくると異様に大きいサイズの文字で「この物語はフィクションです。」から始まる、実在の人物やメーカーとは関係がないことを念押ししているテキストからも逆に察することができるというものだろう。

そんなワケで、作品としては非常にオススメできるのだが、エロゲ業界が舞台ということでエロ方面を期待してる人は要注意。
なんといっても、こんなハーレムみたいな状況であるにもかかわらず、2巻の時点でいまだ主人公にまったく色恋沙汰がありませんから! そちらは素直にエロゲを買ってお楽しみいただければと思います。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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