『小さな恋のでっかいメロディ』
木村恭子 集英社 \420+税
(2015年4月24日発売)
「りぼん」作家でありながら、じわじわオトナ読者の支持を集めている注目作家・木村恭子、待望の2冊目のコミックスが刊行された。
小6の女子たちは休み時間ともなればトイレの鏡でメイク直し。
かわいい下着やエステにも興味しんしん。恋はしたいけど、同級生の男子どもはコドモにしか見えなくて……。
「そんな小学生はいやだ!」「ローティーンにメイクは必要なし」なんて正論はさておき、この年頃の女の子たちがオトナに憧れる気持ちでいっぱいなのはたしかなのである。
ヒロイン・環名の片思いの相手は、母親が経営するバーでバイトしている凛太朗(21歳)だ。
いや、これが10歳下の環名をコドモ扱いせず対等に接してくれる……定石を裏切るいいオトコ!
一方、そんな環名に「子どもなんか相手にされない」
「その歳で恋愛で頭いっぱいってどーかと思う」
「子どもは子どもらしくしてなよ」と正論をブチかましてきたのが、同級生の渋谷くん。
もちろん環名だって黙っちゃいない。「自分が子どもだってことくらいわかってる」「大人になろうとして何が悪いの?」と正面から応戦するのだ。
恋を通して“自分の気持ちを貫く”だけでなく、“他人の気持ちを理解する”という成長のステップが描かれているのが本作の大きな魅力。
迷い、苦しむこともあるけれど、そのときそのときちゃんと考えて、自分の想いを素直に言葉にして。凛太朗、渋谷くんとの本気の会話のなかには、オトナ読者も脱帽の至言がいっぱいだ!
小学6年生が「若気のいたり」なんて口にするのを、大人はつい笑っちゃうものだ。
でも、待てよ……これこそが“大人ぶった”態度なんじゃない?
とっくに大人になった人も、大人の品格を改めて考えさせられる、攻めてる初恋×成長譚である。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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