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『カラスヤサトシの世界スパイス紀行』 カラスヤサトシ 【日刊マンガガイド】

2015/05/27


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『カラスヤサトシの世界スパイス紀行』
カラスヤサトシ 新書館 \590+税
(2015年4月15日発売)


カレー好き・激辛好きとして知られるカラスヤサトシの、『カラスヤサトシの日本びっくりカレー』『カラスヤサトシのびっくりカレー おかわりっ!!』の続編にあたる連載シリーズが単行本になった。

内容的には、カレーの定義をつきつめるうちに必然的にスパイスへと目を向けるようになった著者が、東京近郊の世界のスパイス料理を食べ歩く――といったものなのだが、そこはカラスヤサトシ。いわゆるグルメガイドの類とは一線を画する、おもしろさ。

エジプト料理屋でクミンがミイラを保存するために使われていたと聞き、「たしかにミイラって……匂いかいだことないけど」と納得したり、ブラジル料理屋でブラジルの国旗を目に「宇宙防衛軍っぽい!」と盛り上がったり、ラオス料理で使うカー(注:南姜。タイ・ラオス料理で使われる生姜の一種)の鮮烈な香りに「日本の生姜がおじいちゃんなら、カーはその若い頃!みたいな」と感心したり、カンボジアはお隣のタイに比べて貧しいためスパイスを多用できず、おのずとやさしい味わいになったという話に「バブル崩壊後の日本で細々と貧乏漫画を描いていた自分(激辛好き)がバブルの申し子だったとは……」と愕然としたり。
あいかわらず、独自すぎる想像の翼の広げっぷりにニヤニヤ。

もちろん、スパイスに加え、醤油や味噌のようにヨーグルトを使うブルガリア料理、ニラの花をつぶしたセスというペーストで羊を内臓や脳味噌まで食べつくすモンゴル料理など、世界各国の特色あふれるスパイス料理はとても興味深く、絵的には決しておいしそうではないのに、なぜか猛烈に食欲をそそられるあたり、これぞマンガマジック!と言えよう。

登場したスパイスの個別解説もあり、読めばカレー好きならずとも、スパイスを探究したくなる。
ショップデータも付いているので、実際に自分の舌で世界旅行してみるのも一興。

さらなる続編も、期待してます!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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