『昆虫探偵ヨシダヨシミ』第1巻
青空大地 講談社 \533+税
6月4日はム・シで虫の日(カブトムシを主軸に町おこしを展開する福島県常葉町振興公社が制定)。
ひとくちに虫といっても時代によって概念はさまざまであるが、現在では獣・鳥・魚を除く水中以外の節足動物全般を指す。
マンガと虫の関係は深い。なにせマンガの神様の名前に虫が入っているほどだ。
幼少時から昆虫採集に明け暮れていた手塚が甲虫の「オサムシ」と本名の「治」を掛け合わせて筆名を「治虫」にしたことは、あまりにも有名な話である(もともと読み方もテヅカ・オサムシだった)。
個体別に多彩な能力を持つ昆虫はマンガのモチーフとしても相性がよく、進化したゴキブリと昆虫人間の戦いを描く『テラフォーマーズ』が、「このマンガがすごい!2013」オトコ編で1位を獲得したのも記憶に新しいところだ。
そんな虫の日にご一読いただきたいのが『昆虫探偵ヨシダヨシミ』。
2003年より「モーニング」や「モーニング・ツー」の隙間に不定期連載されていた、知る人ぞ知る脱力系昆虫ギャグマンガである。
主人公は探偵の吉田ヨシミ。北海道の広大な大自然のもとで育ったヨシミは、昆虫や動物の話を理解する特殊能力を持っている。
彼はその能力を活かし、都内唯一の昆虫専門探偵社を営んでいる。
カブトムシの不倫調査、寄生虫に悩むセミ、クモの巣へダイブして自殺しようとするトンボ、シロアリの連続死亡事件、タガメの奥さんの失踪……。
様々なトラブルを抱える虫たちをヨシミと相棒のピータン(インコ)&ムギ(犬)がサポートしていく。
浮気やレイプは当たり前! 貞操観念皆無の世界に生きる方々だけに、下半身関連の依頼が多いのはご愛嬌。
ときには虫目線で人間の残虐さが浮き彫りになるのもおもしろい。ちなみにヨシミへの報酬はクワガタ。ヨシミはクワガタをペットショップに売って生計を立てているのだ。
2010年には昆虫採集を趣味とするアウトドア俳優(!?)哀川翔の主演でまさかの映画化。昆虫マニアの心をくすぐる小ネタも満載で、竹ペンライクなタッチも虫ライフの儚さを演出している。
読了後は虫たちの気持ちを少しは慮れるようになる……かもしれない唯一無二の昆虫主観マンガだ。
<文・奈良崎コロスケ>
マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。ただいま絶賛公開中の映画『新宿スワン』(園子温監督)劇場用プログラムに参加します。
「ドキュメント毎日くん」