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大谷紀子『すくってごらん』インタビュー【後編】 特殊な環境が私を漫画家の道に進ませてくれた

2015/02/23


卓抜した作画力と日本初の「金魚すくい」マンガということで連載開始から大注目を浴びている『すくってごらん』。インタビュー後編では漫画家・大谷紀子はいつ、どのように生まれたのか!? 大谷先生のルーツにせまる! そこには驚きの事実があった!!

 

大谷紀子

女性漫画家。

著作に『Fine』(集英社)、『浦島龍宮絵巻』(集英社)、『メランコリック』(集英社)など。「BE・LOVE」(講談社)にて連載していた『すくってごらん』が2015年2号で最終回を迎えた。

『すくってごらん』最新3巻は絶賛発売中!

Twitter: @noriko_ohtani

「金魚の町」からの大歓迎

――連載を開始してからの読者の反応はいかがでしたか?

担当 もともと読み切りの『なんどでも』が掲載された時に、大谷先生の次の作品が読みたいとの声がありましたので、「待ってました」とのお手紙をいただきました。それに、大和郡山や奈良の方がすごく応援してくれたんですよ。

大谷 もう奈良大好き(笑)。

担当 ある小学校の3年生では、クラス全員がお手紙を書いて送ってくれました。

大谷 校庭で『すくってごらん』の単行本を掲げて、クラス全員が映っている写真を撮って同封してあって、感想文は全員分の原稿用紙をまとめて文集みたいにして、さらに色鉛筆で絵も描いてくれました。

――それはすごい。

大谷 めっちゃうれしかったです。宝物です。

担当 大谷先生優しいから、サインを書いたり質問に答えたり、お返事を書いてくださったんですよ。

大谷 そうしたら、それに対してまたお返事をいただいたんです。「子どもたち、めっちゃ喜んでましたよ」って。

担当 奈良県の民俗博物館[注1]に、『すくってごらん』が表紙の「BE・LOVE」が展示されました。

――なんと!

民族博物館に展示!すごい!!「金魚すくいと大和郡山市の漫画やってます!」ってなんかすごくいい。

民族博物館に展示!すごい!!「金魚すくいと大和郡山市の漫画やってます!」ってなんかすごくいい。


担当 それから大和郡山市の市長さんがプッシュしてくれました。
昨年の10月19日に大和郡山市で初開催された「金魚サミット」では、訪れた関係者に『すくってごらん』のコミックス1巻を配ってくださったんです。

――自治体としても、地元が取りあげられたらうれしいですしね。しかし、すごいじゃないですか。町おこしの一翼を担っていますね。

大谷 私は岡山出身で大和郡山に縁もゆかりもなかったので、こうして取りあげてもらえるとは思いませんでした。

――あと、手前味噌ですが、「このマンガがすごい! 2015」ではオンナ編にランクインしました。

大谷 それこそ自分には完全に無関係だと思ってましたよ(笑)。
うちのアシスタントさんが「このマンガがすごい!」本誌を買っていて、「ちょっと変わったネタだと載りやすい傾向があります。載るといいですね」みたいなことを言ってくれてたんですよ。

――あ、研究されてる(笑)

大谷 その子がすごく喜んでくれましたよ。私以上に(笑)

――ちなみに連載中にいちばん描くのが楽しかったキャラは?

大谷 主人公と王寺君ですね。

大谷先生もお気に入りという紅燈屋の店長・王寺。金魚すくいの魅力を読者に伝えてくれるキーパーソン。

大谷先生もお気に入りという紅燈屋の店長・王寺。金魚すくいの魅力を読者に伝えてくれるキーパーソン。


――逆に、描いていて面倒だったのは?

大谷 金魚です(笑)

――ですよね。

大谷 私もいっぱい描きましたけど、アシスタントさんがすごくがんばってくれました。

――あれ、ひょっとして手描きですか? 何匹か描いて、それをデジタルで複製しているわけではなく?

大谷 完全にノーデジタル、超アナログ派なんです。

作中には当然のごとくたくさんの金魚たちが登場。1匹1匹描き分けられていて今にも泳ぎだしそう。

作中には当然のごとくたくさんの金魚たちが登場。1匹1匹描き分けられていて今にも泳ぎだしそう。


――4色のカラーもですか?

大谷 カラーも手描き、水彩です。コミックスのカバーに関しては、別で描いた金魚ともとの絵をデザイナーさんが合成してくれて、色調補正をかけてくれました。

――あれだけきれいな絵がすべて手描きですか!

2月13日発売の最新刊3巻。表紙の生駒さん、カラーで見ると美しさ100倍、透明感がハンパない。

2月13日発売の最新刊3巻。表紙の生駒さん、カラーで見ると美しさ100倍、透明感がハンパない。


担当 原稿をいただくたびに「本当にうまいなぁ」って、いつも仰天してます。

大谷 いや、そんな……(笑)

――じゃあデジタルは完全にノータッチ。そこはこだわりなんですか?

大谷 いや、「やらなきゃ」と思いつつも逃げてます。
デジタルにすれば、データのやりとりで仕事が進められるので、地方在住のアシスタントさんにもお願いできますし、楽なんでしょうけど……。交通費も、スクリーントーンの費用もかかりませんしね。
ただ、トーンを貼らずにモノクロだけの画面構成が、本当は好きなんです。あずまきよひこ先生の『よつばと!』[注2]とか、オジロマコト先生の『富士山さんは思春期』[注3]とかに憧れます。
でも、空白恐怖症というか、手を抜いていると思われたくなくて「埋めなきゃ!」と思い、つい貼っちゃうんですよね。理想としては全部斜線で描いてみたい。

大谷先生が憧れるという『よつばと!』。シンプルな線が独特のほのぼの世界観を生み出している。

大谷先生が憧れるという『よつばと!』。シンプルな線が独特のほのぼの世界観を生み出している。

――デジタルに移行して、よさがスポイルされちゃう人と、そうじゃない人がいます。どのへんが違うのでしょう?

担当 正直、そこはやってみないとわからない部分はあります。

大谷 私は手描きの暖かみが好きなんですけど、でも最近はもう、描線を見ても区別がつかないところまできてますからねぇ。だから単純に、アナログのほうが速いので。

担当 大谷先生はめちゃくちゃ筆が速いです。

――金魚、いっぱい出てきますもんね。

大谷 ある意味では、この作品の主役は小赤[注4]だったりしますので(笑)。

――水面に人物の顔が映って、そこに金魚が集まってくるコマ。これ、すごいですね。

金魚は好きな人のところに寄ってくる……わけではないらしいが、金魚すくいの時に試してみたい。

金魚は好きな人のところに寄ってくる……わけではないらしいが、金魚すくいの時に試してみたい。


大谷 1匹ずつ違うようにちゃんと描かなきゃダメだなと思っていました。おかげで金魚のかたちは、ちゃんと描けるようになりましたよ。

――われわれ読者からすると、デジタルよりアナログのほうが、原画展で見た時はうれしいですけどね。

大谷 ああ、たしかに。アナログ原稿のほうが、テクニックを生で見られますからね。


  • 注1 奈良県の民俗博物館奈良県大和郡山市にある県立民俗博物館。お笑いコンビ・笑い飯のコントに「奈良県立歴史民俗博物館」が出てくるが、そちらは現存しない。したがって、この民俗博物館には、笑い飯のコントに出てくるような人形は存在しない。
  • 注2 『よつばと!』 あずまきよひこによるホームコメディマンガ。2003年3月より「月刊コミック電撃大王」(アスキー・メディアワークス)にて連載中。ちょっと変わった5歳の女の子・よつばがとってもかわいい。なにげない日常のおもしろさと感動に癒される。
  • 注3 『富士山さんは思春期』 オジロマコトによるラブコメディマンガ。2012年12月から「漫画アクション」(双葉社)にて連載中。背が高い女の子・富士山牧央と背の低い男の子・上場優一、デコボコ幼なじみの恋愛と日常を描く。「このマンガがすごい!」WEBのスペシャルインタビューも要チェック!
  • 注4 小赤 金魚すくいでおなじみの赤い金魚。正式名称は「和金」で「小赤」は金魚すくい業界などで使われる俗称。成長すれば20センチくらいになる。大型肉食魚の生餌としても使われる。

単行本情報

  • 『すくってごらん』1巻 Amazonで購入
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  • 『すくってごらん』3巻 Amazonで購入

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