田中雄一先生による『田中雄一作品集 まちあわせ』のみどころ解説も後半戦。田中先生が語る、表題作「まちあわせ」の注目ポイントとは!? そして『まちあわせ』から一年、そろそろ読みたい新作についても、お話を伺ってみた!
前編はコチラ!
田中雄一『田中雄一作品集 まちあわせ』インタビュー 禍々しいクリーチャーが、カッコいいしキュートだって思ってる。
『まちあわせ』――不思議な世界での純愛
――表題作の『まちあわせ』ですが、かなりドストレートに恋愛ものですよね。
田中 はい。あれはもう、かなり真っ正面から純愛を描こう、といちばん最初に決めていました。
――それはもう、かなり思い切って「これをやるんだ」と決めていたんですね。
田中 そうです。現実ではあまりないような純愛をやろう、と思って描きました。普通、男女が長く離れているといろいろあると思うんですけど、そういうのは全部排除して。
見たこともない世界で純愛を描く、というのがこの話のスタート地点でした。
――世界規模でヤバイ状態になっているんですけど、わりと閉ざされた社会が描かれます。
田中 あんまり世界を広げるとボロが出ちゃうから(笑) 短編なので、ストーリーに必要な情報だけをどんどんと放りこんでいって、余計なことはできるだけ描きたくないんです。現代とは違う世界、人類が絶滅の危機に瀕しているディストピアでは、どういった社会システムになっているのか。そういうことを考えるのは大好きなんですが、外の世界でどういったことが起きているのかを入れちゃうと物語の邪魔になっちゃうので、そういったのは最小限に抑えました。
――じゃあ作品に描かれていない部分まで、考えているんですね。
田中 なんとなく自然に考えちゃうんです。こういう社会だったら、こうなっているはずだろう、と。ただ、主人公の知らないところで起きている出来事は、読者としてもノれないと思うんですよ。見知らぬところで大統領が核攻撃を決めるとかそういったことではなく、あくまで自分の目の届く範囲で知りうること……たとえばテレビのニュースで知るとか。そういう範囲内で描くことが、リアリティがあっていいんじゃないかと思うんです。未知の部分に関しては、その匂いみたいなものがちょっと物語に漂っているくらいがちょうどいいんじゃないかな。