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田中雄一『田中雄一作品集 まちあわせ』インタビュー 禍々しいクリーチャーが、カッコいいしキュートだって思ってる。

2015/08/03


細部まで描きこまれた画面、禍々しいクリーチャー、そして切ないストーリーが話題を呼んだ『田中雄一作品集 まちあわせ』。本作が初めての単行本となる田中雄一先生とはいったい何者なのか? デビューから単行本発売までの経緯、そして収録作品について伺うべく田中先生を直撃した!

後編はコチラ! 田中雄一『田中雄一作品集 まちあわせ』インタビュー 映画を撮るつもりでマンガが生み出される

田中雄一

2000年、「月刊アフタヌーン」主催の新人漫画賞「四季賞」秋のコンテストにて「思い出は冷たい鉄の中に」が入賞。2002年には「四季賞」冬のコンテストにおいて「小さな約束」で四季賞を受賞する。

その後、長い沈黙を経て2009年「四季賞」春のコンテストにて「害虫駆除局」が四季賞を受賞。「害虫駆除局」は、四季賞受賞作品集「四季賞ポータブル」(「月刊アフタヌーン」2009年7月号付録)に収録され、禍々しいクリーチャー・十二脚虫の造形とその壮絶なラストで話題を呼ぶ。

2009年の受賞後「月刊アフタヌーン」誌上に読み切りを継続的に発表。読み切り作品をまとめた『田中雄一作品集 まちあわせ』で『このマンガがすごい!2015』オトコ編第11位にランクイン。

現在、次回作を構想中。

初の単行本がリリースされるまでの経緯

――初の単行本『田中雄一作品集 まちあわせ』が昨年(2014年)6月に発売されると、『このマンガがすごい! 2015』オトコ編では11位にランクインしました。

淡々と作品とご自身について語られる田中先生。『このマンガがすごい!2015』へのランクインは先生にとっても驚きだったとのこと。

淡々と作品とご自身について語られる田中先生。『このマンガがすごい!2015』へのランクインは先生にとっても驚きだったとのこと。


田中 ありがとうございます。

――新人作家で短編集がコミックス化されるのって、なかなか珍しいですよね。

田中 そうですね、ありがたいことで。

――判型もA5判と大判で異例づくしではないかと思うのですが、単行本化までの経緯をお聞かせください。

担当 単行本には2009年以降に発表された4つの短編が収録されているんですが、1編1編のページ数が長いのがいちばんの理由です。

――「害虫駆除局」が107ページ、「プリマーテス」が54ページ、「まちあわせ」が116ページ、「箱庭の巨獣」が56ページですね。

担当 普通の青年コミックスのB6判にすると、コンビニにある廉価版みたいにボッテリとぶ厚くなっちゃうんですよ。A5判だったら気にならないんですけどね。

――ということは、通常のサイズで出そうとしたら、作品を1本か2本減らさなきゃならない。

担当 短編2本だけで単行本1冊、というのもどうかなぁ、って思いますよね(笑)。それに田中さんの絵は密度が高いので、少しでも大きく見てもらいたかった。それであのサイズとページ数になりました。ちょうど『年刊日本SF傑作選』(東京創元社)[注1]に「箱庭の巨獣」を収録したい、との申し出をいただきまして、それも後押しになりました。諸星大二郎[注2]さんの作品とかあのサイズで出ていますから、SFが好きな層にアピールできるかな、という思いもあったんですけどね。

巨獣に守られた街で暮らす人々を描く「箱庭の巨獣」。細部まで描きこまれた異形と共存する街の風景は圧巻!

巨獣に守られた街で暮らす人々を描く「箱庭の巨獣」。細部まで描きこまれた異形と共存する街の風景は圧巻!


――田中先生の作品を初めて読んだとき、「四季賞[注3]、やっぱすげえな」と思いました。勝手ながら田中先生はすごく「四季賞出身作家っぽいな」というイメージを持ってました。

田中 そう……ですか?

――デビュー前は「月刊アフタヌーン」や四季賞にどういう印象を抱いてました?

田中 「アフタヌーン」は私も学生時代に読んでいて、『寄生獣』[注4]のイメージが強いです。

――どうして投稿先に四季賞を選んだんですか?

田中 そこはあまり考えていませんでした。たまたま手に取った雑誌に四季賞の募集広告が載っていたんです。

ちなみに田中先生と同時に四季賞ポータブルに掲載されているのは『トクサツガガガ』の丹羽庭先生(当時、丹羽麻里子名義)と『ちちこぐさ』の田川ミ先生の作品。うーん、やっぱり四季賞ってすごい!

ちなみに田中先生と同時に四季賞ポータブルに掲載されているのは『トクサツガガガ』の丹羽庭先生(当時、丹羽麻里子名義)と『ちちこぐさ』の田川ミ先生の作品。うーん、やっぱり四季賞ってすごい!


――これは担当さんにお聞きしますが、なぜ四季賞にはこれほど特色のある作家が集まるのでしょうか? 

担当 うちはほかの新人賞と違って、ページ数の制限がないんです。だからときどき段ボール一箱分の大作とか届いちゃったりもするんですけど(笑)。ただ、一般受けは難しそうであっても、何か引っ掛かるものがあるぞ、と感じたらできるだけピックアップしていこうと思っています。新人賞ですからね。今、メジャー誌ですと、どうしても即戦力が求められます。うちとしては、まだ完成されていなくても、光るものがあれば新人賞をあげていっしょにがんばっていこう、と。ただ、四季賞出身者でも他誌で世に出る作家さんは多いです。そこはわれわれの反省点ですね。せっかくウチに投稿してくれたのに、うまく世に出してあげることができなかった、と。

――「まちあわせ」は116ページもありますよね。

読めばその物語の力に圧倒されること間違いなし!

読めばその物語の力に圧倒されること間違いなし!


田中 最初にこれが完成したときは「こんなになっちゃってどうしよう?」って思いました。でも、そのまま送ったんですけどね(笑)。

担当 100ページ以上のネームがきたときは、最初は「うわぁ」って思いました(笑)。でも田中さんのネームは、先が気になって食い入るように読んじゃうんですよ。中とじの週刊マンガ誌だと合計ページ数は400Pくらいなので、とても載せられないでしょうけど、「アフタヌーン」は当時で800ページくらいだったかな。だからまぁ……。いや、そうは言っても無理やり前後編にわけるしかないかなぁ、って思っていたところ、うまい具合にページ数の都合がついたんですよ。

田中 一度に全部載せてもらって、本当にありがたいと思います。うまく受け入れてもらって、すごくラッキーでした。


  • 注1 『年刊日本SF傑作選』 創原SF文庫(東京創元社)から年に1回刊行されるSFアンソロジー。年度別に刊行され、2013年の『さよならの儀式』にマンガ作品では唯一、田中先生の『箱庭の巨獣』が収録された。
  • 注2 諸星大二郎 SF・伝奇のパイオニア的な漫画家。代表作に『妖怪ハンター』『西遊妖猿伝』『暗黒神話』『マッドメン』などがある。今年5月には河出書房新社から『諸星大二郎 マッドメンの世界』(文藝別冊/KAWADE夢ムック)が刊行された。
  • 注3 四季賞 「月刊アフタヌーン」が主催する漫画新人賞のこと。春、夏、秋、冬と年に4回開催される。ジャンル、ページ数ともに無制限。大賞受賞者には新井秀樹、王欣太、沙村広明、黒田硫黄、五十嵐大介、篠房六郎、漆原友紀、とよ田みのるなど。審査員特別賞、四季賞、順入選や佳作受賞者を含めると、現在活躍中の漫画家が多数出ており、「漫画家の登竜門」的な賞として広く知られている。
  • 注4 寄生獣 岩明均の作品。1988年から1995年にかけて「月刊アフタヌーン」に掲載された。謎の寄生生物(ミギー)と共生することを余儀なくされた主人公・新一の数奇な物語。連載終了後も根強い人気を誇り、2014年には日本テレビ系列でアニメ化され、また2014年に実写映画『寄生獣』(第1部)、2015年に『寄生獣 完結編』(第2部)が公開された。実写映画は、どちらも監督・山崎貴、主演・染谷将太。

単行本情報

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