『大家さんは思春期!』第4巻
水瀬るるう 芳文社 \619+税
(2015年5月7日発売)
とてもまじめで、家事が大好き。料理が得意で、商店街では食べ物屋さんから、サービスの声がかかる。
好きな読みものは安売りのちらし。節約家というかお金の使い方をあまり知らず、いつも制服を着ている。
おじいちゃんから子どもまで仲がよい。純粋で知らないことが多いから、優しい大人がみんなで教えてくれる。
それでいてクラスメイトには、あまりの落ち着きっぷりとテキパキ家事をこなす様子からお母さんのようにも見られる。
そんな、中学生の少女・里中チエちゃんは、うちの大家さんでした。という女子中学生版めぞん一刻。
うらやましい! うらやましすぎるぞ!
……と、よだれを垂らしたくなるところですが、チエちゃん歳相応以上に無知なので、見ていてほっておけない。住人の前田さんは軽いときめきを覚えつつも、すっかりお父さん気分。
クラスメイトの間では「彼女にしたい女の子一位」「校内で妹にしたいランキング一位」「校内で姉になって欲しいランキング一位」「お母さんになってもらうなら一位」。
母性と、子どもらしさ。思春期の揺れ動きと、家事と仕事を支えるたくましさ。そして幼さと、おばちゃんぽさ。
四方八方を攻めるチエちゃんの魅力、ロリコンならずとも、コロリとなる恐ろしいマンガだ。
しかし前述の前田とチエちゃんの恋愛が作中で描かれることはない。なぜなら彼は隣の部屋に住んでいるホステスの白井麗子に興味があるからだ。ただ麗子はというと、チエちゃんマニアで隠し撮りしまくり中。
商店街の面々を含め、大人たちがチエちゃんを愛しすぎているがゆえに、悪い虫が全然つかない。だからといって温室育ちになるわけでもなく、努力家のチエちゃんは、日々たくましく成長している。
最新4巻では学校での出来事が比較的多め。その相談のため、毎回前田の部屋に行ってしてしまうのがチエちゃんらしい。
大人たちから見た中1少女大家さんを描く、異色なシチュエーションの青春物語。
健やかに育ってほしいけど、このまま時が止まればいいのに、とも感じてやまない。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」