『四月は君の嘘』第11巻
新川直司 講談社 \429+税
(2015年5月15日発売)
テレビアニメの放送終了とほぼ同じタイミングでの雑誌連載終了も話題を呼んだ、音楽を題材にした切ない青春ストーリーの最終巻だ。
始まった瞬間から、主題のはっきりした物語だった。母親の死をきっかけに音楽を捨てた、かつての天才ピアニスト・有馬公生と、とある秘密をその身に抱えた破天荒なヴァイオリニスト・宮園かをりのボーイ・ミーツ・ガール。
公生の友人やライバルをはじめ、そのほかの登場人物たちも生き生きと動きまわり、重奏的な物語を作り出していた。さながらオーケストラのように。
しかし、アンサンブルの中から浮かびあがる主旋律――公生とかをりの魂の共振、ふれあいこそが、この作品の中心であり、そこから物語の軸がぶれることはなかった。
単行本10冊をかけて積み重ねてきたすべてが、ラスト直前の公生の演奏シーンに集約されていく様は圧巻だ。物語の構成力もさることながら、画面構成の巧みさが光る。セリフの詩的な使い方もうまい。
音楽の魔力をここまで見事にマンガという表現に昇華した作品は、そうそうない。完結を機に、ぜひ一気に読みきってほしい。
<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei