『四月は君の嘘』第10巻
新川直司 講談社 \429+税
(2014年10月17日発売)
11歳のとき、母の死をきっかけにピアノが弾けなくなってしまった元天才少年・有馬公生(ありまこうせい)。しかし、14歳の春、実力と豊かな個性を兼ね備えた同い年のヴァイオリニスト・宮園かをりと出会い、覚醒する。
公生の世界は色彩を取り戻し、彼は再びピアノと向きあい始めるのだ。
しかし、常に自由に振る舞い、怖い物知らずにさえ見えるかをりは、深刻な病を抱えていた。長らく演奏から遠ざかっていた公生にコンクールの伴奏を頼んだり、元気よくハッパをかけたり……また、その演奏自体が公生の復活を支えていた彼女は、長期入院を余儀なくされる。
今度は自分がかをりの力にならなければと、コンクールに向けて集中力を高める公生は、同時に彼女への恋心を自覚していく。
中学生活も終わりに近づき、それぞれの進路を見つめる時期。それはだれもが将来の行く先に思いをはせ、これまでともに歩んできた友人を、特別な感慨を持って見つめ直すシーズンでもある。
本巻では、幼い頃から公生とコンクールでしのぎを削り合ってきたライバルの横顔が、たっぷりと描きこまれているのが印象的だ。また、公生の幼なじみである澤部椿と渡亮太の心のうちも気になるところ。
公生が再びピアニストとして輝き始めたことを喜びながらも、公生がかをりにひかれていることに心乱れる椿。一方の公生は、かをりには自分よりも渡のほうがつり合うのではないかと思わずにいられなくて……。
TVアニメもスタートし、ますます注目が高まる本作。
どの一瞬もきっと後から振り返ったときに宝物のように思える……そんな多感な日々の熱が痛いほど伝わってくる青春群像劇だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」