『少年よギターを抱け』第3巻
信濃川日出雄 集英社 \600+税
(2014年8月8日発売)
「夢はロックスター」と公言してはばからない女子高生・坂井真琴。ランディ・ローズに憧れて、彼のトレードマークの水玉柄フライングVを買ったという、気合いの入ったJKだ。
とはいえ、掛け声ばかりで練習ははかどらず、バンドのメンバーも集まらず、そのくせ人気が出はじめた同級生・恵留のギャルバンに嫉妬の炎を燃やす……。
そんな痛さ爆発中のヒロインが、本巻で、ようやくはじめの一歩を踏み出した! じつのところは、年上のロックマニア、そして冷静な親友の助言を得て、地味でカッコ悪~い初歩の練習に取り組む、というだけなのではあるが。
一方で、真琴のクラスメートであり、本作のもうひとりの主人公である沙村杏にも変化が現れる。スイーツ作りと家事全般が得意なかわいこちゃん男子と見せかけて、じつは彼の心のなかには、熱いギタリストの魂があった。
杏のギターの腕とセンスは、半年前にステージ上で死をとげた兄・リュウから引き継いだもの。ずっとギターを封印していた杏だが、そのずば抜けた才を知るミュージシャンから表舞台に引っぱり出されたことを機に、再びギターを手にするのだ。
そんな杏に、突如「いっしょにバンドをやろう」と誘われ、とまどう真琴。そして杏に目をつけ、急接近する恵留。 リュウが杏に託した、いわくつきのギターについても語られ、ドラマは加速する。
さまざまな世代の“音楽に憑かれた者たち”の思いがほとばしり、たくさんの潮流を見せてくれる、青春バンドマンガだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」