『今日のユイコさん』第5巻
秀河憲伸 講談社 \552+税
(2015年6月23日発売)
あ、そうか。そういうことか。
最終話を読み終えた瞬間、『今日のユイコさん』というタイトルの意味が、ストンと腑に落ちた。
目つきが悪くてきまじめで、堅物な言動ばかりするけれど、じつはとても優しくて、繊細な感情を内に秘めている女子高生のユイコさん。
本作は、そんな彼女と、平々凡々な男子高校生のトモヤくんによる、極めてまじめな男女交際の模様を、じっくり丹念に描いてきた。もちろん、最終巻であるこの第5巻でも、そこが作品の重要なファクターであることに変わりはない。
しかしいっぽうで、ユイコさんの周囲の世界がグッと広がりを見せる。
友だちが増え、学校行事に積極的に参加し、トモヤくんと離れて行動する場面も多い。
そしてラストシーン。
ああ、そういえば、このマンガのタイトルは、『ユイコさんとトモヤくん』じゃなかったな。そう、しみじみと思わされた。
明日へとつながる、「ユイコさん」の「今日」。
ひとりの不器用な少女が、大切に思える人と出会い、日々成長していく。その過程の「今日」という一瞬を、切り取り続けた物語だったのか、と。
読後の爽やかな感動を、ぜひ味わってほしい。
<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei