『アリス イン デッドリースクール』
麻草郁(作) 小島アジコ(画) KADOKAWA \920+税
(2015年6月26日発売)
アリスインプロジェクトによる、若手アイドルと女優のみで構成された舞台シリーズの第1弾として2010年に初演された『アリス イン デッドリースクール』(脚本:麻草郁)を、『となりの801ちゃん』などで知られる小島アジコがマンガ化した本作。
舞台はとある中学校。作品は漫才研究会の2人を中心とした、女の子だけの日常系的作品として幕を開けるが、アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』よろしく、第3話ラストをもって雰囲気は一転、世界はゾンビが暴れ出すサバイバル空間へと変容する(そういえば『まどマギ』の魔法少女もゾンビのごとき存在であった)。
女子中学生17人(+女性自衛隊員2人)は、その過酷な世界で懸命にもがきつづける――。
通常、ゾンビものマンガというと、『アイアムアヒーロー』や『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』などのように、そのアクションやサスペンスの緊迫感に呼応した高い画力と迫力ある描写で物語られるものだが、本作は小島アジコのクリンナップされていないゆるいタッチのもと、女の子(とゾンビ)しか出てこない4コママンガとして、(劇的な大ゴマなどもなく)淡々と展開していく。
物語的に見ればシリアスでドラマチックと呼ぶべきだろう本作は、(マンガ評論も手がけている麻草郁の原案を彩るにふさわしいだろう)こうした挑戦的な仕掛けによって、(ちょうどSF+魔法少女バトルからなるシリアスな物語を4コマ出身の蒼樹うめの絵柄で展開した『まどマギ』のような)心地よい異化効果を招きこみながら、ラスト5ページへ向けてゆっくりと、しかし着実に歩みを進めることとなる。
ゾンビのごとく繰り返し再演されてきた本舞台が、マンガ版で加えられたアレンジを受けて、どのような変化を遂げるのか。デッドリースクールに迷い込んでしまったわれわれは、まだここから抜け出せそうもない。
<文・高瀬司>
批評ZINE「アニメルカ」「マンガルカ」主宰。ほかアニメ・マンガ論を「ユリイカ」などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
Twitter:@ill_critique
「アニメルカ」