『燐寸少女』第2巻
鈴木小波 KADOKAWA \580+税
(2015年7月4日発売)
妄想って、けっこうころころ変わるよね。その日次第で。
だから気楽。呪いや願いや夢ほど重くない。
マッチ売りの少女・リンが差し出すのは、妄想を具現化できる「妄想マッチ」。
火が点いている間に思った妄想が形になるマッチ。ひと箱ぶん、お代は寿命1年ぶん。
手のなかで灯る火を見て、妄想を叶える人間たちを描く、オムニバス作品だ。
ケーキで楽して成功したいと思う青年。思っていることが言えなくて、うずうずしている女の子。小説を完成させられない少女。
人間以外の存在もこの巻ではマッチを使っている。
願望じゃなく妄想なのがミソ。想像力がなければ、たとえマッチを使って妄想が具現化したとしても決してうまくいかない。
そして現実が妄想をはるかに超えていってしまえば、マッチがいらなくなることもある。
この巻では、第1巻に出てきた「本心=深層心理」を表出させるろうそく売りの少女・チムが再登場。
リンの噂を嗅ぎつけたオカルト雑誌の記者が、2人の少女に同時に出会う。妄想を叶えるリンと、本心を叶えるチム。どちらと出会うことが、幸せなんだろう?
「妄想」は無数にあるマッチであり、「本心」は1本しかないろうそくの如く。なんにせよ、「マッチがあるから」「ろうそくがあるから」それだけで、幸せとか不幸せが決まるわけではない。
すべては見方次第。自分がどう心に決着をつけていくかの方が、叶う・叶わないより重要だ。
だから、リンとチムの存在が引き立つ。
彼女たちはだれかの願いを「叶えてあげたい」わけじゃない。ましてや失敗させて不幸にしたいわけでもない。
ただ「妄想」を、「本心」を“見たい”だけなのだ。
相手の心を見抜こうとするチムの瞳。
いっぽう、人間の変化を鑑賞するリンの瞳は、なんだかレトロ調でオシャレで、妄想のようにセクシーだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」