『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』第1巻
増田こうすけ 集英社 \390+税
607年――この当時は元号がないので推古天皇15年、旧暦7月3日つまり現代の暦法で8月1日に、第2回遣隋使が派遣された。
遣隋使というのは、「日本」という国名ですらなかった当時の倭国が、技術や制度を学ぶために隋に派遣した朝貢使で、最初の使節団派遣は600(推古8)年に行われた。しかしこの派遣、倭国が外交マナーにうとかったこともあってか、とくに成果もえられず、詳細な記録が残っていない。
「日本書紀」に記載されるようになったのは第2回からで、つまり日本史の授業で習ったり、山岸凉子先生のマンガとかで知る「日出処の天子」発言が出たのも、じつはこの時なのである。
朝貢先である隋の煬帝に「太陽が昇る国(=東の国)の天子が、日が沈む国(西の国)の天子に書を送ります」とメッセージを送った第2回遣隋使の使節は小野妹子。彼を使節に任命したのが、かの聖徳太子なのだ。
聖徳太子と彼の信頼厚き小野妹子、その絆……というより奇妙すぎる関係が描かれているマンガが奇才・増田こうすけの『ギャグマンガ日和』だ。
いまや10巻を超える長期連載となったことを思えば、2人の初登場は第1巻の第3・4幕と、まあまあ早い段階。まるで部屋着のごときジャージ姿でパンツすらはかない(そしてなんか臭い)聖徳太子の命令で隋に向かうことになった妹子は、臭い太子を政治から遠ざけようとする蘇我馬子の策略で、なんと太子といっしょに隋に向かうことに。
とてもじゃないが史実には絶対ありえない聖徳太子と小野妹子像を存分に楽しめる本作。すったもんだのすえ、随に到着したかと思えば、村の老人から馬をパクろうとくだらなすぎる策を講じてドツボにハマるといったぐあい。
ただ、全編通して「日本」ではなく「倭国」と表現していたり、微妙に史実に忠実なところがあるのにはちょっと感心した。ちょっとだけだが。
ちなみに第1巻に登場する歴史上の偉人はマシュー・C・ペリーに義経&弁慶、松尾芭蕉とその弟子・曽良そしてアイザック・ニュートン。
歴史を縦横無尽に斬りまくるギャグマンガを読もう。
<文・富士見大>
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)ほかに参加する。ただいま好評発売中の『バケモノの子 オフィシャルガイド』もやってます。