『CLAYMORE』第27巻
八木教広 集英社 \400+税
(2014年12月4日発売)
2001年に「月刊少年ジャンプ」で連載スタートするも雑誌休刊。「週刊少年ジャンプ」本誌で番外編を短期掲載した後、「ジャンプスクエア」へと移籍。
と、作品自体が波乱万丈の旅をしてきた『CLAYMORE』が、ついにフィナーレを迎えた。
舞台は中世西洋風の世界。人々は、人肉を喰らう妖魔に日々脅かされていた。
これに唯一立ち向かえるのが、銀髪銀瞳の若き女性戦士たち、通称「クレイモア」。
物語は、クレイモアの一員・クレアが少年ラキを妖魔から救い、ともに旅を始めるところから幕開ける。
優しく健気な少年と、クールな戦乙女。徐々に絆を深める2人の旅路はやがて、クレイモアを育成する「組織」の謎に迫り、大きな動乱に引き裂かれていく……。
序盤のシンプルな怪物退治の活劇から、クレイモア同士の対決を描く局面に移って一気に緊張感が増し、半人半妖の肉体をもつ戦士たちが自らに課せられた過酷な運命に抗う姿から目が離せなくなることうけあいだ。
本作は「内なるものとの戦い」が様々な意味、様々なレベルで組み合わされている。
大陸内にはびこる妖魔。
「組織」の内部に仕組まれた陰謀。
クレイモアの内輪の対抗意識。
戦士の体内で常に暴走の危険がある妖力と破壊衝動。
そして焦点はさらに絞り込まれ、戦士各々の心の内にある弱さ、悲しさ、怒りや憎しみへフォーカスする。
そのため、超人や人外を描きながら、本作はどこまでも普遍的に、人間についての物語になっている。
ラキが最初から最後までただの人間として成長し、ただの人間だからこそ最終決戦で究極の怪物の盲点を突いて、大きな役割をはたすくだりが鮮烈だ。
クレアはぱっと見で冷淡なキャラクターのようでも、じつは劇中で誰よりも胸のうちに熱い人間味を宿している。過去に恩人を殺された復讐心もそのひとつだった。
内なる試練を乗りこえたクレアが、旅路の果てにラキとともにたどりつく場所。そこは、視界が外側へひらけた美しい光景として描かれている。
このラストシーンを美しいと感じられるのも、クレアの人間としての心に、読者が寄り添えるゆえだろう。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。プリキュアはSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7