『多重人格探偵サイコ』第22巻
大塚英志(作) 田島昭宇(画) KADOKAWA \580+税
(2015年7月4日発売)
『多重人格探偵サイコ』といえば、そのセンセーショナルな内容ゆえに数多のフォロワーを生み出すいっぽうで、いくつかの自治体で有害図書に指定されるなど、様々な方面で話題となった作品。
猟奇殺人を扱った「サイコ・サスペンス」と呼ばれるジャンルを代表するポジションと言って差し支えないだろう。しかしここ数巻の展開は、その印象で読んでしまうと、かなり面食らうような様相を呈してきているのである。
なにせ登場した頃は“悪意の権化”のようだった西園弖虎(にしぞの・てとら)が、今や戦隊モノや『パシフィック・リム』のパロディを演じつつ、平たく言えばパートナーである伊園・アリワン・美和(彼女も、もともとはかなりシリアスな役回りだったのだが……)とフュージョンしてゾンビの群れをなぎ倒しながらラスボスへ挑む、といった突き抜けすぎたバトルへ突入。
まぁ、ステージとなっているのがその“ラスボス”(たぶん)である若女・モノストーンの精神世界という状況ゆえの「なんでもあり」ではあるのだが、「えっ? バーコード殺人者とかどうなったの??」といったあたりで本作に関する認識が止まっている人にこそ、現在進行中のラストバトル(たぶん)は知っておいていただきたい次第。
久しぶりに読む人は、めちゃくちゃビックリします。たぶん。
ところで、「ついに完結」とうたわれていた前巻で完結しなかった本作。……で、今回は? という点に関しては、またしても完結いたしません!
もしかして、わざと翻弄しているのでは……? という気もうっすらするのですが、ここまできたらもう、むしろ「終わる終わる詐欺」を積極的に楽しむ方向で次巻を待ちましょう。
いったいどこに、どんな着地をするのか、もはや想像もつかなくなってますから。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。