『親父衆』
大友克洋/寺田克也/中川いさみ/吉田戦車ほか
集英社 ¥2,100+税
(2015年7月22日発売)
豪華漫画家33人が独自の視点で親父を描いた異色のイラスト・コミックエッセイが発売された。
これは「ジャンプ改」にて、企画の発案者である大友克洋と寺田克也をレギュラーに、毎回2名のゲストが作品を寄せる形で約4年間、計38回にわたって連載されたもの。
さきの2名以外にも、吉田戦車、中川いさみ、江口寿史、とり・みき…といった面々が名を連ねている。
一部、マンガ形式になっているものもあるが、大半はイラストの余白に克明な説明文や独自の親父論がが付くスタイルで、駅のホーム、車内、居酒屋、公園、釣り堀、スーパー銭湯、ライブ会場、病院……etc、日本のおやじ聖地はもちろん、イタリア、フランス、トルコ、ベルギー、ウルグアイなど、世界各地で採取された「愛すべき親父衆」がみっちり詰まった本書。
中身を知ってしまうと、なんだか置いてるだけで加齢臭が漂ってきそうな……(失礼)。
「親父路上観察」ルポといえば、すでに内澤旬子『おやじがき 絶滅危惧種中年男性図鑑』という名作があるが、こちらは描く方も大半が親父ゆえか、親父のかっこ悪さやこっけいさを冷静に分析し、おもしろがりつつも客観的にはなりきれず、そこはかとない愛とシンパシーが漂ってくるのがイイ。
これだけ大物漫画家が集まって、よりによって親父!? という脱力感&作家陣の異常な熱気もまた、本書の魅力だ。
なんせ、大友克洋の描きおろし新作(絵はもちろん文章も!)がこんなに膨大に読めるだけでも、ファンには垂涎ものであり、せっかくの画力をこんなことに使うとは……。まさに大いなる無駄というか遊びというか、とにかく贅沢極まりない!
東村アキコの娘視点からの親父観察も秀逸。親父のかわいさを独自の視点で語りまくる、山田参助は流石というか、おもしろすぎ。
巻末の池上遼一に至っては、あのスーパー写実な画だけでもう、昭和の親父臭(誤植ではありません)がプーンと……。河村康輔のコラージュも最高にディープな一冊。
ちなみに「グランドジャンプ」では現在、同じメンツで音楽をネタにした「musica nostra」なる連載も始まったそうで、こちらも要チェックだ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69