『ムルシエラゴ』第5巻
よしむらかな スクウェア・エニックス ¥552+税
(2015年7月25日発売)
もし、手に負えないような凶悪犯罪が起きたら、だれに任せればいいでしょうか?
答え「同じくらい凶悪な犯罪者に任せればいい」。
紅守黒湖(こうもり・くろこ)。ひょろ長い体格で体術に長けている女性。銃は百発百中の名手。好物はかわいい女の子。性的な意味で。
数百人を殺している彼女。無差別殺人でも快楽殺人でもない。振りかかる火の粉を払いのけるように迷惑な相手を殺してきただけ。
彼女と組むのは、凄腕のドライバーにしてお気楽天然な屠桜ひな子。
警察は2人と手を組んで、どうしても対処できない凶悪犯罪の始末を任せることになった。
次々解決されていく犯罪。すばらしい。
問題は事件解決後に、あたり一面、ミンチが散らばる血の海になっていることくらいだ。
第5巻で2人が警察から依頼されたのは、幼女の殺人事件。雨の日に、靴をはいておらず、首を強く絞められ、頚椎が折れて即死。恨みか? 快楽殺人か?
しかし黒湖は言う。もし本当に恨んでいたら即死なんてさせない。あらゆる苦痛を与えて、死ぬまでの時間、いたぶりつくすはずだ。そうでないのならこの死体は……。
“毒が毒を制する”作品。
黒湖が人間をバッサバッサと殺してぐちゃぐちゃにしていくのが気持ちいいマンガだ。殺すことに躊躇がない彼女の存在そのものが「猛毒」だ。
ただし、警察が考えている「毒」の部分は、彼女の殺人能力だけではない。
殺人犯の心理は、カタギの人間には理解がまったくできないことがある。なぜ殺したのかわからないことには捜査も進まない。
黒湖は人殺しだから、人を殺す人間の気持ちがわかる。
サイコパスたちを追いつめていけるのは、彼女の猛毒しかない。
事件が事件なだけに、警察官たちが後始末している時の雰囲気はあまりよくない。“毒をもって毒を制す”というやりかたが、はたして本当に正しいのかどうかという疑問がどうしてもわいてくる。
黒湖は、血まみれ臓物まみれの事件の後はお楽しみタイム。かわいい女の子をベットに引きこんでイチャイチャだ。
両者には決して埋まることのない、感覚の深い溝がある。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」