『魔法使い(♂)と弟子(♀)の不適切なカンケイ』第1巻
紺矢ユキオ KADOKAWA ¥570+税
1998年8月17日、この日は全米が一大スキャンダルに揺れた日。
そう、あの第42代アメリカ合衆国大統領であるビル・クリントンが、当時ホワイトハウス実習生だったモニカ・ルインスキーとの「不適切な関係」を公式に認めたのがその日のこと。
法廷証言だけならまだしも、テレビ演説で合衆国大統領が全世界に向けて不倫の釈明をするという、下世話な方面としては前代未聞の大スキャンダルへと発展した記念日(?)なのである。
そもそも、コトの起こりは同年の1月に不倫報道が始まったことにあるのだが、その後、モニカ・ルインスキーが「大統領の精液が付着した青いドレス」などという、「なんのマンガなんだそれ?」と言いたくなるような証拠を提出。
そして、まさかの大統領のDNA鑑定という事態に発展したうえ、まさかまさかの「限りなくクロ」の鑑定結果! ……で、ついには恥の極みのような告白をする羽目になった、という次第。
この間(そしてこのあとも)、いったいどういった行為が大統領執務室に隣接した書斎で行われたのかなど、必要以上に生々しい暴露情報が海を越えて日本でも連日報道されていたのだが、その「不適切な関係(原文ではrelationship that was not appropriate.)」というフレーズは、当然のように流行語に。
いやぁ、「不適切な関係」って絶妙に堅い言いまわしとうさん臭さの入り混じった翻訳をした人はすばらしいと思います!
というワケで、このスキャンダルがあったからこそ、このタイトルのマンガが生まれたであろう『魔法使い(♂)と弟子(♀)の不適切なカンケイ』を本日はオススメしておこう。
もっとも、こちらは決して、本家(?)のようなドロドロした不倫モノなどではなく、スタート時点ではかなりライト感覚のラブコメファンタジー。
魔法使いで恋愛に関しては朴念仁と言うべきニブさのマスターと、そんな師匠に対して恩義とともにムラムラした気持ちも感じている魔術師見習いのもとに、「性欲の女神」であるイシュタルが召喚され、タイトルどおりに「不適切なカンケイ」となる危険が増し増しに……といった内容。
しかし、“ザ・ラブコメ”だと思って油断してると、クトゥルーとか出てきちゃうし、ガチ魔術バトルもあり。
そしてお色気方面でも、意外なほどハードな展開に! そんなカオス感が楽しい作品であります。
このあとさらに、『クラスメイト(♀)と迷宮の不適切な攻略法』という作品に発展していくのですが、「不適切」ってワードは受け継がれてるのがミソ。
それぐらい、インパクトあるフレーズですよね「不適切な関係」って。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。