『煉獄ゲーム』第1巻
北野弘務(画) 福原蓮士(構) 江崎双六(案) 講談社 ¥602+税
(2015年7月28日発売)
池袋で、集団意識不明事件が発生した。
その原因は解明されないまま、被害者たちは回復していったが、そのうちのひとり瀧本カナは恋人である宮内大蔵の目の前で、突然爆発死してしまう。そして、カナの腕には「死刑執行」の文字が刻まれていた。
神木竜二は、バイト仲間である大蔵に協力を依頼され、カナの死の原因を探るため池袋に向かうが、そこで出会ったのは三輪車に乗った怪しい幼児であった。
2人は幼児から「お前ら死刑」と宣告され、いきなり異世界へと飛ばされる。
そこでは3つの輪が浮かんでおり、幼児は「この3つの中から“正解の輪”を選んで ボクをおうちに帰して」と告げる。そして「かえれるのはさんにんだよ」というヒントめいた言葉が空中に描かれていた。
不正解の輪を選んだものは、瞬時にバラバラになってしまった。竜二と大蔵は、異世界で偶然一緒になった忍者の末裔だというイケメン・黒谷サスケとともに、この命がかかったゲームへと挑むことになる。
腕力がない竜二にとって、唯一の武器はその知力である。竜二は、児童養護施設の出身で、施設の経営者であった日暮実徳(ひぐらし・じっとく)なる人物を尊敬している。その「実徳さん」の教えを思い起こすことが、ゲームの理不尽な状況を乗り切るヒントにもなるのである。
知力を尽くして「3つの輪」のゲームのポイントを見抜いた竜二は、大蔵・サスケの信頼も獲得して、ここでひとつのパーティーができあがるわけである。
そして、ゲームをクリアした3人の腕には「終身刑」の文字が浮かびだしてきた……。
この理不尽なゲームは何が原因で発動するのか、現時点では明かされていない。
「3つの輪」のゲームに関して言えば、異世界に集められた人間たちの前に幼児が出現したタイミングは様々なのである。竜二と大蔵の場合はすでに説明したとおりだが、そのほかの者たちの証言によれば「校舎から飛び降りようとした時」「パンツをのぞき見してたら……」「授業を終えて女子生徒と談笑してたら」「あたしは浮気がバレて…」「銀行強盗の逃走中に」と、じつにバラバラである。
しいて共通項を探るとすれば、なんらかの罪(自殺も「罪」だとすれば)を犯した者(または未遂者)となるだろうか。罪人を集め、クリアした者は救済し、できなかった者は断罪する……というのがゲームの原理なのだろうか(しかし、そうだとすれば、ゲームをクリアした竜二たちが「終身刑」となって、再度ゲームに招集される点は解せないのだが)。
このようにだれが、なんのためにこうした「ゲーム」を進めているかは、現時点(第2巻)では謎のままだ。
竜二が尊敬する「実徳さん」が、重要な役割を果たす予感はあるのだが、そうした分析を進めるにも材料不足である。
第3巻以降の展開を注視していきたい。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。『本格ミステリベスト10』(原書房)にてミステリコミックの年間レビューを担当。最近では「名探偵コナンMOOK 探偵少女」(小学館)にコラムを執筆。また「ミステリマガジン」9月号にコミック評が掲載されています。