『僕のヒーローアカデミア』第5巻
堀越耕平 集英社 ¥400+税
(2015年8月4日発売)
「ヒーロー」という言葉は、人間の個性そのものを表す単語ではない。
人間が目指している思想を表すものだ。
世界人口の8割が特別な体質である「個性」(特殊能力)を持ち、そんななかで「ヒーロー」を目指そうとするものたちが集う場所。それが雄英高校ヒーロー科。
第4巻からは、各々の「個性」をフル活用する雄英体育祭がスタート。登場するキャラクターたちの「個性」もだいぶ明らかになってきたところで、トーナメント形式のガチバトルが開かれる。
重要なのは、対戦相手を「敵」としてぶちのめす試合ではないこと。
登場するキャラクターは全員「ヒーロー」志望だ。だからみんな正々堂々と、全力で「個性」をぶつけあう。
この第5巻で注目したいのは、右手で氷結、左手で豪炎という、破壊力最上級クラスの「個性」を持った轟焦凍(とどろき・しょうと)の悩み。
彼は炎を操るヒーロー・エンデヴァーを父親に持つ。エンデヴァーの後継者になることを押しつけられ、多くのものを奪われてきた焦凍は、父から譲り受けた「個性」を忌み嫌い、炎はずっと封印して戦ってきた。いわば枷だ。
しかし主人公の緑谷出久(みどりや・いずく)や、爆破能力使い爆豪勝己(ばくごう・かつき)は、炎は轟自身の「個性」なのだから、みずからの意志で使って戦うべきだと発破をかける。
自分が不利になるのに! そういうの嫌いじゃないよ!!?
爆豪や轟は、性格に相当難ありのめんどうくさい子だ。
だが彼らは「ヒーロー」の心を目指すもの。悩みも資質のひとつ。訓練や試合のなかから自分を見つけていく。
「ヒーロー」になるための最大の敵は、戦闘相手でも、自分の個性の質でもない。みずからの心だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」