日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー! 今回紹介するのは『れとろげ』。
『れとろげ』第2巻
白川嘘一郎(作) くさなぎゆうぎ(画) マイクロマガジン社 ¥800+税
(2015年8月13日発売)
JKたちの日常系萌え4コマ×レトロゲームネタ。
わずか20字強で言えるコンセプトのなかで、すでに宇宙の法則が乱れている。
初代プレステ発売の頃に生まれたかどうかの女子高生(本作の第1巻は2011年発売)が、なんでファミコンやメガドラソフトをフツーに遊んでるの!?
京都に行けば任天堂の旧社屋を拝みに行く、まぁわかる(観光で上鳥羽に行く人いないけど)。
京都みやげにPCエンジン用アドベンチャー『金盞花京絵皿殺人事件 』のキーアイテムである九条ネギを買う……そんなJKがいたら紹介してよ!
その意味で、このマンガはアニメ版が話題の『がっこうぐらし!』と同じカテゴリにある。
「扉の向こうに歩く死体がある」ように「女子高生が初代ゲームボーイをやる」時空だ。この世界にあるはずの現代ゲームハードはどこに消えた、某国のECM攻撃で文明が破壊されて過去のゲーム機だけが残ったのか。
カメラを舞台の外に向ければ『マッドマックス』のような荒野が広がってるのか……と考えると、背筋も凍るコズミックホラーだ(考えすぎか)。
くさなきゆうぎさんの作画は萌え4コマの現代レギュレーションを満たしていて緩い空気感も心地よい。ゲームマニア向け雑誌「ゲームサイド」や「ユーゲー」のトップライターでもある白川嘘一郎さんのぶっこむゲームネタは「わかる人だけわかれ」で容赦ない。
筆者もドリームキャスト互換ゲーム機搭載テレビ「CX-1」ネタには、言いしれない敗北感に打ちひしがれた。
原作者と漫画家の本気と本気が、あたかもグレートタイフーンと超空間ブラックホールのようにぶつかり合い、ほっこりと安定している奇跡。
読者を置いてけぼりにした小ネタを解説するマル秘解説も純粋にコラムとしておもしろい。
4年ぶりの新刊だけど、登場ゲームハードがほとんど20年以上前なので、今さらネタが古くならないのもナイス(いいのだろうか)。
ただ、京都でのトー○ネタはもっと掘り下げてほしかったですよ、さん!
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。