『ピコピコ少年』
押切蓮介 太田出版 \660+税
11月23日はいわずと知れた勤労感謝の日、であると同時にゲームの日でもあることをご存じだろうか。
「人々が仕事や勉強の尊さをはっきり自覚しながら、ゲームを楽しみ、ゲームと生活との調和が感じられる日」として日本アミューズメントマシン工業協会、全日本アミューズメント施設営業者協会連合会、日本SC遊園協会が制定したのだそうだ。
うーむ、勤労感謝の日を逆手にとった、やや強引な記念日ですな。ゲームとひと言でいってもカードゲームやらボードゲームやらさまざまな種類のものがあるが、アミューズメント施設関連の3団体が制定した「ゲームの日」ということで、本日紹介するのは押切蓮介の『ピコピコ少年』。
小学1年でゲームウォッチを手にした神崎良太(押切の本名)が、ゲームによって人生を狂わされ、ゲームによって人格を形成していく80年代~90年代のゲーム回顧録である。
ファミコンはもちろん、アーケードゲームにも熱狂した神崎少年は、ゲーセンはもちろん、駄菓子屋の軒先やスーパーの屋上に設置されているオレンジ筐体にも熱狂。やがて時代は格闘ゲーム全盛期となり、名前も知らぬ老若男女と激しいバトルを繰り返す日々を送り始める。
そこは惨敗したプレイヤーが断末魔の叫びをあげ、筐体にケリを入れ、画面にツバを吐き、ハメ技で勝利した対戦相手にリアルファイトをしかける阿鼻叫喚の暗闇。
それでも次から次へと登場する最新鋭のマシンに神崎少年のワクワクは止まらず、足しげく通い続ける。
第2話「LOVEゲーム対戦少年」では『ヴァンパイアハンター』で52人抜きの偉業を達成した神崎少年の前に天使のような美少女が現れ、連勝記録を阻止される。
残念ながらこの美少女はアホ面の彼氏連れというオチがつくのだが、このエピソードが『ハイスコアガール』の源流であることは想像に難くない。
今は亡き「CONTINUE」(太田出版)にて07年に連載がスタートした本作。同時期に「週刊ヤングマガジン」で連載していた『でろでろ』のホラーギャグ要素を随所に挿入しつつ描かれるゲーム人生物語は、アラサー、アラフォーのファミコン世代に大反響を呼び、漫画家・押切蓮介にとってもネクストステージへと上がる起爆剤となった。
著作権騒動についての見解をここで述べるのは止めておくが、日付や地名、固有名詞を丁寧にひろって、童貞ピコピコ少年時代を生き生きと描く押切作品は、唯一無二の輝きにあふれている。
ゲームで青春を台無しにした元ピコピコ少年の皆さん! 続編の『ピコピコ少年TURBO』はもちろん、「ぽこぽこ」で連載中の『ピコピコ少年SUPER』も必読ですからね!
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
「ドキュメント毎日くん」