365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
9月26日は台風襲来の回数がもっとも多い日。本日読むべきマンガは……。
『台風の日 -真造圭伍短編集』
真造圭伍 小学館 ¥619+税
9月26日は、統計のうえで台風襲来の回数が最大の日だ。
1954(昭和29)年には強風で知られる洞爺丸台風によって青函連絡船・洞爺丸が転覆・沈没事故を起こし、1958(昭和33)年には大規模な水害を及ぼした狩野川台風が伊豆・関東地方に上陸(正確には27日0時ころだが)、1959(昭和34)年には明治から現在までで最悪の被害を引き起こした台風・伊勢湾台風が東海地方に上陸している。
平成27年に台風18号(アータウ)が大規模な水害を引き起こした今年は、これからも台風ラッシュの予測が出ていたりと、とくに防災意識を高めていきたい1年でもあるだろう(現在、被害の大きかった茨城県では義援金も募集しているので、チェックしてみてほしい)。
他方で、台風や災害は、マンガでもたびたびモチーフとして描かれてきた。
フィクション内でのそれらは多くの場合、時代を覆う空気感や人の抱える名状しがたい心情を隠喩的に表現するために用いられるが、今回紹介する真造圭伍の初期短編集『台風の日』の表題作もまた、そうした作品のひとつと言える。
台風により1階が完全に水に沈んだアパートの2階の部屋で、あえて救命活動に隠れて引きこもる心君とぞーさんのだらしない大学生2人組。水没した夜の街を見ながら「つまんねーな。最近」と口にするなかで――。
同時期の長編作品同様、本短編集にはこうした青春の自意識を強く反映した作品が多く収められている。
ただそれと同時に、その後のファンタジー要素を強めた作品の萌芽も確認できるところが興味深い。
たとえば短編「ビール獣」はのちの長編『みどりの星』の異星人と通じる存在として読めるだろうし、同じく短編「兄、らしく。」は、現在連載中の『トーキョーエイリアンブラザーズ』の原型を成しているだろう。
今後さらに勢いを増すだろう真造圭伍の嵐の萌芽がここに確認できる。
<文・高瀬司>
批評ZINE「アニメルカ」「マンガルカ」主宰。ほかアニメ・マンガ論を「ユリイカ」などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
Twitter:@ill_critique
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