日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは『東京おさんぽがーるず』
『東京おさんぽがーるず』
秋吉イナリ 白泉社 ¥600+税
(2015年7月29日発売)
タイプの異なる2人の女子大生が、東京のアチコチを訪れて、魅力を発見していく散策物語。
大学生になったばかりの小柄で内気な野々花はなかなか友達ができず、地元の谷中から、上野まで散歩に出かける。あいにく上野動物園は休園日だったが、不忍池に飛びこむ金髪の少女・サンディと出会う。
父親が日本人、母親がアメリカ人のダブル(ハーフ)だと自己紹介する彼女は、なんと野々花と同じ大学の新入生だった。
サンディは来日したばかりで日本文化に興味津々。散歩好きといっても自宅から徒歩圏を徘徊する程度だった野々花は、サンディと一緒に「さんぽ部」を結成し、東京中をめぐり始める。
上野公園の西郷さんを皮切りに、東京大神宮で絵馬を描き、皇居で江戸城へ想いをはせ、築地でなぜか牛丼に舌鼓を打つ。坂の多い渋谷では変わりゆく景色を楽しむことを知り、小旅行気分で八王子までラーメン探訪……といった具合だ。
がっつりとしたネーム量で名所を詳細に紹介するようなウンチク作品ではなく、ゆっくり、ふんわりと、東京を再発見するのが趣旨。
なまじ東京に住んでいると、あまりに身近すぎて、わざわざ足を運ばない場所が多々あるもの。そんな場所を野々花とサンディが仲良く散策している姿を見るうちに、思わず出かけたくなることうけあいだ。
すでに「ヤングアニマル」での連載は7話の北区王子編で終了しており、通巻のつかない形でコミックス化の運びとなったが、売り上げ次第では続刊も期待できるだろう。
「さんぽ部」の東京散策はまだ始まったばかりだし、小学生にしか見えない地理学者・松島伊織の活躍も読んでみたい。
「ヤングアニマルDensi」にてコミックス未収録の港区愛宕編が読めるので、気になった方はぜひチェックしてくださいませ。
<文・奈良崎コロスケ>
マンガ・博奕・映画の3本だてライター。中野のマンションに大卒初任給以上のバカ高い家賃を払って住んでいるが、真隣がブロードウェイという立地で、「まんだらけ」を書庫がわりに使っているので、なかなか引っ越せない。