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『リボンの騎士《なかよし オリジナル版》 復刻大全集』Box1 手塚治虫 【日刊マンガガイド】

2015/09/29


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは『リボンの騎士』


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『リボンの騎士 《なかよし オリジナル版》 復刻大全集』Box 1
手塚治虫 復刊ドットコム ¥9,200+税
(2015年9月18日発売)


雑誌サイズのB5判、美しい箱入りの豪華きわまりない復刻版が登場だ。

巨匠・手塚治虫の『リボンの騎士』といえば説明不要の大傑作。
マニアならば1953~56年に連載された「少女クラブ」版と、そのリメイク版として描かれた1963~66年の「なかよし」版があることをご存知だろう。このたび復刻されたのは「なかよし」版だ。

各話の扉絵も、雑誌掲載時のまますべて収録。アナログの手仕事ならではの深みのあるカラーは心が吸いこまれそうな美しさだ。

各話の扉絵も、雑誌掲載時のまますべて収録。アナログの手仕事ならではの深みのあるカラーは心が吸いこまれそうな美しさだ。

手塚治虫は単行本化の際にかなり編集の手を入れることが知られており、雑誌「なかよし」連載当時そのままの“オリジナルバージョン”全話収録での刊行は初の試みだという。
フルカラーの美しさはもちろん、あたたかみのある2色ページもノスタルジックで味わい深い。
Box 1に、B6判の別冊ふろくがそのままついているのも、“連載当時”のスタイルの忠実な再現にこだわったため。「このつづきは、すぐ別冊ふろくでみてね。」(雑誌の柱コピー)……で、いったん本を脇に置き、ミニ別冊を開くのもまた楽しい。

さて、念のためあらすじを少々。
本来女の子として生まれるはずが天使・チンクのミスで、男の子と女の子、両方の心を持って生まれてきたサファイヤ姫。
一国の王のもとに生まれた運命から、表向きは王子として育てられる。だが、自分の息子を王位につけようともくろむジュラルミン公が、サファイヤが女の子であることを暴こうと、さまざまな策を弄して……。

悪魔の娘・へケートに飲まされた薬で白鳥の姿になってしまったサファイヤ。後年、白鳥そのものに改稿されたため、バレエの白鳥の衣装をまとった“イメージ”的な描写が読めるのは、この「なかよし」雑誌復刻版だけ。

悪魔の娘・へケートに飲まされた薬で白鳥の姿になってしまったサファイヤ。後年、白鳥そのものに改稿されたため、バレエの白鳥の衣装をまとった“イメージ”的な描写が読めるのは、この「なかよし」雑誌復刻版だけ。

当のサファイヤは王として立たねばならないという使命感と、隣国の王子・フランツに恋い焦がれる乙女、両方の気持ちに思い悩む。
そこらの男はまるで敵わない剣の腕を持ち、さっそうと馬を乗りこなすりりしいサファイヤ。ロングヘアーのウィッグをつけ、ボリュームたっぷりのドレスをまとい、いち少女としてフランツの前に現れるときの可憐なサファイヤ……どちらの姿もため息が出るほど美しい!

ふくらんだ袖、大きなリボンのついたボリュームたっぷりのドレスにひじの隠れる手袋……完璧なお姫様スタイルがたまらない!

ふくらんだ袖、大きなリボンのついたボリュームたっぷりのドレスにひじの隠れる手袋……完璧なお姫様スタイルがたまらない!

みやびやかな王宮、かわいらしい動物たちとたわむれる森のなか、幽閉された石牢、ぶきみな魔女の砦……次々に変わる活劇の舞台背景も心を揺さぶる。
これを雑誌サイズの大きな判型で読めるのは、名画を大スクリーンで見るがごとし。

大河少女小説的なドラマチックさ、少女マンガらしい華麗な画風、そこに幼い頃から宝塚歌劇を見て育った手塚ならではのミュージカル風の演出がさしこまれる本作は唯一無二のエバーグリーンなのである。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」

単行本情報

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