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『スラップスティック』第1巻 青野春秋 【日刊マンガガイド】

2015/10/14


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『スラップスティック』


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『スラップスティック』第1巻
青野春秋 小学館 ¥552+税
(2015年9月11日発売)


30~40代なら懐かしいに違いない、ダウンタウンのコント番組『ダウンタウンのごっつえぇ感じ』(1991~1997年)。同番組に、「おかんとマーくん」というコントがあったことを覚えているだろうか。
松本人志扮する“おかん”と、浜田雅功扮するヤンキー息子が繰り広げるコントは、過剰なまでの愛情と勘違いを押しつけてくるおかんに、マーくんがときにキレまくり、そしてときに心打たれるという内容だ。

青野春秋『スラップスティック』は、そんな「おかんとマーくん」を思い出させる作品だ。
田舎町に住む9歳の春人と、6つ年上なヤンキーの兄・秋介。そんな秋介を叱りまくる母親の3人家族が織りなす物語は、笑っていいのか、泣いていいのか、そんな感情を読後に芽生えさせる。

兄の秋介が荒れているのは思春期だからというだけでなく、ほかにも理由がある。貧しいのに加えて、複雑な家庭事情。
弟の春人と秋人は、血がつながっていない。秋人は母や街の不良たちと同様に、春人に対しても暴力的で恫喝的でもあるが、春人に何かあれば兄として立ち上がりもする。すべてがなんだかせつない。

生々しい貧乏と痛み。思えば著者の代表作『俺はまだ本気出してないだけ』も笑いに転嫁させてはいたが、描かれていたのは痛々しいまでのリアリティといやらしさをもった負けっぷりだ。

本作は、絵柄もネームも『俺は~』以上にシンプルで、それだけに詩情的でもある。
タイトルが意味するのは、身体を張った喜劇(=スラップスティック)。つまり本作はコメデイなのか、最後には笑顔がくるというものなのか、そもそも笑うしかないまでの悲劇ということなのか。
すごいマンガというよりも、すさまじいマンガ。それだけの静かだけれど強い吸引力が本作にはある。

あなたは泣くか、それとも笑うか。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が発売中。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。

単行本情報

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