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『ふつつか者の兄ですが』第1巻 日暮キノコ 【日刊マンガガイド】

2015/10/17


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ふつつか者の兄ですが』


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『ふつつか者の兄ですが』第1巻
日暮キノコ 講談社 ¥560+税
(2015年9月23日発売)


『喰う寝るふたり 住むふたり』で世の男女の共感を集めまくった、日暮キノコの最新作。

恋に遊びにバイトに青春を謳歌する女子高生の志乃の唯一の悩みは、数年前から引きこもりになった兄・保。
彼の存在を「青春の敵」と考え、親しい友人にも自分はひとりっ子であると偽り、かたくなに秘密にしてきた志乃だが、ある日突然、保が「脱・引きこもり宣言」をして――。

いくら兄のことが恥ずかしくても、親友にまで必死で嘘を突きとおすって、いくらなんでも……と思ってしまいそうだが、このぐらいの年頃は家族という存在自体が恥ずかしくて、変なところでカッコつけてたよなあ……とハタと納得。
おこづかいが欲しいという目的以上に、バイト先での仕事や人間関係を水を得た魚のようにイキイキと楽しむ志乃の姿にも、そういや高校の頃のバイトって、家とも学校とも違う自分の居場所があることが、妙に大人っぽく感じられてうれしかったなあ……と甘酸っぱい気分になったり。

なんてことはない日常の些細な描写に、登場人物のキャラクターや心情を的確に落しこみ、さりげなく読者に解読させる手腕は、やはり、この人うまい!と感心しきり。

いろいろあって、ようやく兄を受け入れ始める志乃。まだ間に合う!? と再生への一歩を踏み出した一家の前に、一筋縄では行かない未来が暗示されるラストシーンに、心がざわざわ。
『喰う寝る~』では、仲よしカップルの日常を通して、他人同士が一緒に暮らしてゆくことの難しさとすばらしさをリアリティたっぷりに、さらりと描いてみせた日暮キノコだが、今回はどんな「家族の物語」を見せてくれるのか、期待せずにいられません!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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