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『銀牙 THE LAST WARS』第1巻 高橋よしひろ 【日刊マンガガイド】

2015/10/17


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『銀牙 THE LAST WARS』


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『銀牙 THE LAST WARS』第1巻
高橋よしひろ 日本文芸社 ¥593+税
(2015年9月9日発売)


脈々と連なる奥羽山脈の一角、二子峠には犬の楽園がある。
ここにはかつて人喰い熊の一群が、人間すら寄せつけぬ牙城を築いた時代があった。その支配者の名は、赤カブト。約10メートルもの巨躯を誇る、まさしく魔王であった。

だが、そんな赤カブトに果敢に立ち向かったものたちがいた。
熊犬シロの血を受け継ぐ総大将リキに率いられる、全国から集った1800匹もの野犬軍団である。
文字どおり人智を超えた獣たちの戦いは、やがてリキの息子、流れ星 銀の放った秘技「絶・天狼抜刀牙」により決着を見た。
その勝利により人間も銀たちの功績を認め、二子峠は犬の解放区に指定される。

こうして三代にも渡る赤カブトとの因縁に終止符を打った銀は、奥羽軍2代目総大将として長きにわたり楽園を治めるのだった。

『銀牙 -流れ星 銀-』は、「週刊少年ジャンプ」にて1983(昭和58)年から1987(昭和62)年にかけて連載された。
わずか4年弱という短い連載期間ではあったが、当時の人気作品の例に漏れずテレビアニメ化、さらに第32回小学館漫画賞を受賞している。そのあらすじをざっと紹介すると、上記のとおり。
実際には赤カブトとの決戦後、皇帝ガイアに支配される「帝国」との戦いが展開されるのだが、怪しげな妖術をそなえ、みずからの意志で気象現象をも操る狼たちの能力は、人間さながらに犬同士が会話する『銀牙』においても描写のエスカレートがすぎるきらいがあり、続編でも詳細に触れられることがない。

そう、『銀牙』にはいくつかの続編コミックが存在する。
銀の息子として生まれたウィードの成長と活躍を描いた『銀牙伝説WEED』、ウィードの子供たちにフォーカスを当てた『銀牙伝説WEEDオリオン』、銀の側近を務める伊賀の忍犬 赤目のルーツに迫る『銀牙伝説 赤目』、そして最新作『銀牙 THE LAST WARS』である。
『WEED』から数えると、既に連載16年目に突入しており、総発行部数も2000万部を越す押しも押されぬ「週刊漫画ゴラク」の看板作品だ。『銀牙』を読んだことはないが、『WEED』なら知っている。そんな読者も大勢いることだろう。

さて、これまで奥羽軍の前には、遺伝子操作を施された怪物、残虐なグレードデンに従う野犬軍団、ゲラダヒヒに従う猿の群れ、ロシアから渡ってきた軍用犬集団、北極熊とヒグマの雑種であるハイブリッド親子、天変地異(!)、天下統一を目論む忍犬軍団といった難敵が立ちふさがってきたが、『THE LAST WARS』では宿命のライバル、赤カブトの血を継ぐ巨熊軍団が登場する。

すでに第1巻の時点で、歴戦の勇士である伝七とリディアが命を落としており、無敵のウィードも瀕死の重傷を負っている。
かつて赤カブトと牙を交えた銀、赤目、黒虎、クロスらは健在だが、銀牙シリーズは戦士たちの老いについて、常にシビアな描写を貫いてきた。老犬となった銀の眼は、白内障に侵されていて視力もゼロに近い。
これがシリーズ最終作となるのかどうかは不明だが、銀にとって最後の戦いになることは間違いない――。



<文・ガイガン山崎>
“暴力系エンタメ”専門ライター。北見の白狼をこよなく愛する。最近になるまで、犬を見下す狼たちが「八犬士」を名乗っていることの不自然さに気付かなかったピュアボーイです。

単行本情報

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