日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『コンプレックスエイジ』
『コンプレックスエイジ』第6巻
佐久間結衣 講談社 ¥570+税
(2015年9月23日発売)
コスプレと言う言葉が認知され、仮装というたぐいのものから、現在のコスプレと言うかたちになってから20年以上が経過した。
かつてはアニメやゲーム、マンガ作品やその作品に登場するキャラクターをこよなく愛する一部の人たちのサブカルチャーとして存在してきたが、現在となっては、趣味のひとつとして定番化されつつある。
元ネタを知らなかったり、非日常を楽しむだけだったり、みんなで騒ぐのが楽しかったり、そういうコスプレイヤーもいたりするとのこと。
ただ、そうは言っても、いまだにコスプレを奇異な目で見る人は多いし、それをわかっているうえでコスプレをする人もいる。
『コンプレックス・エイジ』に登場する主人公・渚はその中間で葛藤するコスプレイヤーだ。
会社の同僚や彼氏の無理解に悩んだりもする。ただ、周囲の人々もむげに否定をしているわけではなく、表面上では肯定すらしてくれる。
ただ、軽い気持ちでコスプレを楽しむには、好きすぎて本気すぎてしまうので、そのミゾは深い。
同じコスプレイヤーでもキャラクターに対し、いい加減な思い入れやコスプレの作りこみ、着こなしは許すことができず、ときには批判すらしてしまう。
多くの趣味のひとつとしてコスプレがあれば、同僚にも彼氏にもあっけらかんとカミングアウトでき、それこそいっしょにやろうと誘うこともできたはずだが、それはやはり許すことができない。
最終話で「好きは呪いだ」と叫ぶシーンがあるが、まさにこれに尽きる。
渚の母親は若いころに大好きだったゴスロリをやめ、親友の公子は結婚を機にコスプレをやめた。
同じ結論を選ぶこともできたと思うし、もっと本気度を下げてコスプレを続けることもできたと思う。しかし、それができないほどに好きになってしまったと言うことだろう。
呪いになってしまうほど好きになるということは本当に幸せなことであると同時に、多くのこと、ものを諦めなくてはならないのかもしれない。
最終巻となる6巻では、連載誌の「モーニング」では描かれていなかった、後日談となる描きおろしのおまけのマンガがついています。
渚の行く末がちょこっとわかりますので、ぜひご一読を!
<文・岡安学>デジタルモノなどのガジェット系を中心に雑誌やWebで活動するフリーライター。元ゲーム誌編集者で、ゲームやアニメ、マンガなどのメディアも守備範囲。ソフトとハードのどちらもこなす。現在、生活総合情報サイト「オールアバウト」にてデジカメのガイドも務める。