365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
11月1日は寿司の日。本日読むべきマンガは……。
『すしいち!』第1巻
小川悦司 リイド社 ¥552+税
食欲の秋! 新米の季節到来! てなわけで、昭和36年に全国すし商生活環境衛生同業組合連合会は11月1日を寿司の日に制定した。
ここで歴史ロマンあふれるルーツを紹介しよう。
歌舞伎十八番狂言、義経千本桜「鮓屋の段」に登場する平維盛(たいらのこれもり/平清盛の嫡孫で平重盛の嫡男)は、寿司屋の先祖と言われている人物だ。
平家一門の武将だった維盛は壇ノ浦の戦いで源氏に追われ、吉野の鮓屋にかくまわれることに……。そうこうしているうちに、鮓屋の娘・お里と恋仲になった維盛は「鮓屋の弥助」として生きていくことになる。
11月1日は維盛が「鮓屋の弥助」に改名した日なのだそうだ。
あれれれれ? 維盛ってたんなる落人で、そもそも鮓屋はその前から存在していんじゃないの? もしかして元有名人が「鮓屋の弥助」を名乗っていたから、元祖っぽくなっているだけ??
ま、ともかく後に「弥助」の2文字は寿司の符合・異称となってしまうのだから、維盛の人生もライク・ア・ローリングストーンである。
さて、1000年以上も日本人に愛されてきた寿司だが、現代人が食しているような握り寿司文化が確立したのはわりと最近で、江戸時代の末期である。
東京湾でとれる新鮮な魚介を握り寿司にして屋台で売り、庶民が立ち食いする。いわば東京ローカルのファストフードが原点なのだ。
『すしいち!』(リイド社刊「コミック乱ツインズ」連載中)の舞台は、黒船来航直後の江戸本所。
豪華な内店(店舗形式)から流行の屋台まで、多彩な寿司屋がしのぎを削る寿司屋横丁に連日客が押し寄せる人気店があった。
その名も「菜の花寿司」。寿司を握らせたら右に出る者のいない鯛介は、ただうまいだけでなく、細やかな心配りを施し、寿司党たちのハートをがっちりとつかんでいた。
そんな鯛介が、様々な人々の人生を変える渾身の寿司を握る人情劇が綴られる。
著者は90年代に異色の料理対決マンガ『中華一番!』シリーズで人気を博した小川悦司。本作でもDNAは継承され、鯛介の寿司を頬張った人々が、あまりのうまさに異次元へトリップするぶっとび描写が最高に楽しい(そしてムダにエロい!)。
江戸前寿司にまつわるウンチクも無理なく勉強できるし、一粒で何度もおいしい、まさに今が旬の寿司マンガだ。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしているライター。