日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『秋津』
『秋津』第2巻
室井大資 KADOKAWA ¥620+税
(2015年10月15日発売)
鳴かず飛ばずの漫画家・秋津薫とその息子・いらかを中心に、薫の担当編集者、アシスタント、友人漫画家、いらかの同級生……など、ひとくせある人々が織りなす、シュールな日常ギャグコメディ。
とにかく斜に構えていて理屈っぽくて子どもじみてて、締め切りが近づくと現実逃避してばかりのダメダメすぎる父親に対して、小学生のいらかは素直でよい子で、父を反面教師にしているからか妙に老成していて……。
そんな凸凹親子のやりとりは海外のホームコメディさながら。ちぐはぐでテンポのよい会話がなんともおかしく、愛おしい。
ブラックできわどい風刺や不条理ネタ、比喩のチョイス、テンポや間の取り方も絶妙。
最初はギャグがうまくツボにハマらず、空回りして「うわっ、読みづら……」とイライラしていたのに、読み進めるうちに、そのズレ具合が妙に気持ちよくなっていたりしたので、本巻で終了とはちょっぴり残念だが、唐突に訪れるラストシーンがまたいい。
「猫エッセイで手堅く稼ぎたいニャー」「同じ売れぬのならば せめて名が欲しい」てなセリフから察せるように、「漫画家マンガ」としても異色かつリアリティたっぷりだ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69