日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『絡新婦の理』
『絡新婦(じょろうぐも)の理(ことわり)』第1巻
京極夏彦(作) 志水アキ(画) 講談社 ¥429+税
(2015年10月16日発売)
「あなたが――蜘蛛だったのですね」
衝撃的な一行から始まる、京極夏彦の手による奇想天外な伝奇ミステリ『絡新婦の理』。
絶大な人気を博した「百鬼夜行」シリーズ第5弾が、志水アキの手によってコミカライズされたのが本作だ。
小説では目くらましのようにあちこちに視点が飛ぶが、マンガの方は聖ベルナール女学院から始まるわかりやすい展開で、物語世界に入りやすくなっている。
キリスト教系全寮制の名門お嬢様学校という、神秘的かつ魅力にあふれた舞台だ。
ときは戦後まもなくの頃。
聖ベルナール女学院では、山本という女性教師が、巷をにぎわす「目潰し魔」によって命を落としており、その事件は学院内の生徒たちに少なからず動揺を与えていた。
学院の生徒である呉美由紀(くれ・みゆき)は、親友・渡辺小夜子が大きな悩みを抱えていることを知る。
小夜子は、生活指導の教師・本田から辱めを受け、本田への復讐を願っていたのだ。
小夜子は、この学院に密かに伝わる儀式で、本田を呪い殺すと言いだす。教師の山本も、その儀式で呪われたせいで目潰し魔に殺されたのだという。
小夜子の固い決意に、美由紀も協力しようと心に決めるが――。
女学院での七不思議、呪いの儀式に目潰し魔、黒い聖母に蜘蛛の僕……。
読者の興味を揺さぶるモチーフが次々と現れ、たくさんのキャラクターがそれぞれに活躍するこみいった原作を、すっきりと理解しやすい形でマンガ化していることには驚嘆を覚える。
また京極堂こと中禅寺秋彦をはじめ榎木津礼二郎、木場修に関口と、おなじみのメンバーが続々と登場するが、それぞれがほぼイメージどおりの外見。
原作ファンにも説得力のあるビジュアルにも注目してほしい(個人的には特にこけし頭の青木くんを推したい)。
さて、手元にある文庫版『絡新婦の理』は、その本文がじつに1400ページ近くある。 著者が手がけた京極作品のコミカライズは『魍魎の匣』、『狂骨の夢』、『姑獲鳥の夏』、『百器徒然袋』に続く5作目だが、このどっしりと分厚い小説を、これからどのような形で料理していくのか非常に興味深い。
続刊は来春予定とのことで、巷では「蜘蛛の巣館」と呼ばれる織作家が舞台となるようだ。 本巻で登場済みの、聖ベルナール女学院の織姫こと織作碧(おりさく・みどり)ほか、美人姉妹が勢ぞろいする見せ場。 絢爛なビジュアル表現を期待しつつ、楽しみに待つとしよう。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」