日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『本が好き子さん』
『本が好き子さん』
なるあすく 太田出版 ¥740+税
(2015年11月19日発売)
2013年「メディアファクトリー文庫J 公式キャラクター原案コンテスト」で特別賞を取った「本が好き子さん」が、太田出版の「Web連載空間 ぽこぽこ」での連載を経て、ついにコミックスとなって登場。
本を題材にしたマンガで、まず頭に浮かぶのは施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』だが、『本が好き子さん』は、『バーナード嬢曰く。』と違って、作家や作品の固有名詞がバンバン飛び交うようなマンガではない。本がとても好きな女の子が、本が好きすぎるがゆえに、おかしな行動をとってしまう(直接肌から本を感じたいと思って、本の女体盛りをしちゃったりします)――そんな「本が好き子さん」の日常を楽しむ4コママンガである。
「本が好き子さん」は、本を読むことはやめない(眠っているときは別)。
いつも○○しながら読書する、という行動パターンになる。
歩きながらの読書は当たり前。食べながらでも、泳ぎながらでも読書(泳ぐというか、本を両手で持ち、両足を水面下で「ばしゃしゃしゃ」と動かし、高速で水面を移動するのだ!)。
「本が好き子さん」は、とても恥ずかしがりやの女の子。
話しかけられそうになると、足をすばやく蹴って小さな竜巻を起こし、それに乗って空へと逃げ出す。また、人を避けるために、それとなく壁も走る。
そして、壁を走る脚力が評価されて、クラスの200メートル走の代表に選ばれてしまう(恥ずかしがりやで、早く終わらせたかったため、ぶっちぎりで優勝してしまうのだが)。
ところで、「本が好き子さん」も、小さい頃は、まわりの子どもたちから本ばかり読んでいるので「なんかキモーイ」と心ないいじめを受けた。
「本が好き子さん」は「友達を作るには本読んじゃダメなの……?」と悩むが、父親の「好きなものに正直でいて何が悪い」との言葉に救われる。
そして、今「本が好き子さん」はありのままの状態で受けいれられ、クラス委員長のしおりさんとも友だちになった。
でも、彼女が好きな道を貫いても大丈夫だったのは、かわいい女子高生だったからじゃないかな、とも思ったり……。そんなふうにいろんなことを考えさせてくれるマンガである(やや、考えすぎかも)。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。『本格ミステリベスト10』(原書房)にてミステリコミックの年間レビューを担当。最近では「名探偵コナンMOOK 探偵女子」(小学館)にコラムを執筆。