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『魔女の森』第1巻 狐面イエリ 【日刊マンガガイド】

2015/12/08


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『魔女の森』


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『魔女の森』第1巻
狐面イエリ マッグガーデン ¥571+税
(2015年11月14日発売)


大魔女が女帝として国を収める帝国時代。
魔力をもたない人間と魔女が距離を置き、それぞれ生きている世界で、「魔女の森」と呼ばれる深い森のなかにひっそりと生活する魔女のロゼと、彼女に関わる人々を描いたファンタジーが『魔女の森』だ。

1話完結のオムニバス形式で描かれるのは、それぞれの「願い」をとおした物語。
パトロンの娘と恋仲になった画家は、ほかの男と婚約をした娘のことが本当に好きだったのかわからなくなってしまう。ロゼは画家に、握って眠るとその人の内にある理想を夢に見ることができるという「望心草の種」を手渡す。
画家の本当の願いとは? そしてどう答えを導きだすのか……。

深い森に住む魔女という舞台に加え、さらにこのマンガをひときわ幻想的にさせるのは、狐面イエリの描く線だ。
トーンをあまり使わず、陰影、森の茂った木々、煙、木目などあらゆる描写を細かな線で、語弊があるかもしれないが、しつこいほどに描いている。
それにより、ページ全体が木版で作られた版画のようで、どこか遠い昔に実在した場所で描かれた話のような感覚におちいる。

初めてページを開いた時に思い浮かべたのは、ジョン・テニエルによる『不思議の国のアリス』の挿絵だ。線の効果によって、おとぎの国の話なのに怪しくて妖艶。
『魔女の森』では、線の表現がファンタジックな舞台におどろおどろしい雰囲気を加えている。

ヒット作である『魔法使いの嫁』は設定をとことん作りこみ世界を緻密に描き、『ダンジョン飯』はRPGの世界観にキャッチーな切り口で挑み人気を博した。
『魔女の森』は独特の表現を追求した、ファンタジーコミックの新風になるか。

この「線の表現」によるさまざまな話を、見てみたくなる。



<文・川俣綾加>
フリーライター、福岡出身。
デザイン・マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブや、「マンガナイト」などで活動中。
著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)。
ブログ「自分です。」

単行本情報

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