日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『新装版 ハッピーエンド』
『新装版 ハッピーエンド』
ジョージ朝倉 講談社 ¥900+税
(2015年11月13日発売)
『ピース・オブ・ケイク』、『溺れるナイフ』の映画化で、ふたたび注目を集めるジョージ朝倉。
彼女が2002年に放った名作が13年の歳月を経て、新装版でよみがえった。
主人公・ショーコは19歳で漫画家デビューするも、死ぬほどおもしろいマンガも描けず、大恋愛もできず、学生時代からの友人・アキラとつるんではバカバカしい日々を過ごしていた。
しかし、アキラは突然、妊娠・結婚。ショーコの前から姿を消してしまう。
いつまでも同じようにいられるわけがない。そんなのわかっちゃいるけど……。
裏切られたような気持ちのまま、恋人ができても、仕事を変えても、以前のまま前に進めないでいるショーコのくすぶりに、だれもが若き日の焦燥を重ねずにいられない!?
ガンコでワガママで、そのくせ主体性がなくて厭世を気取りながらも悪あがきを続ける「女子の自意識」を、大島弓子文脈の少女マンガとは異なるバンカラ骨太調で描ききる、独特の世界観は今なお唯一にして無比。
著者の半自叙伝、しかも全編(300ページ!)の描き下ろしということもあってか、誌面からほとばしる混沌としたエネルギーと刹那な疾走感にいやおうなく心をわしづかみにされる。
「人って誰からも必要とされなくなると消えちゃうんだって」
「おめーの不幸ぐらいあたしがどーにでもしてやるから」
といった生々しいセリフ。スタイリッシュでありながら荒々しく生々しい絵もぐっとくる。
たとえ以前とは関係が変わっても、遠く離れてしまっても、こんなふうにつながっていられる女友だちっていいな、としみじみ思わずにいられない。
ほろ苦くも愛おしい青春のマスターピース的一冊。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69