日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『キューマイ![球場迷子]』
『キューマイ![球場迷子]』
石田敦子 リイド社 ¥630+税
(2015年11月19日発売)
『球場ラヴァーズ』シリーズでおなじみ、石田敦子が描く新たな“球場女子”がお目見えだ。
物語の幕開けはなかなかにハード。
ヒロイン・優子の彼氏がある日突然失踪してしまう。連絡が取れなくなり、勤め先の会社に問いあわせるとすでに退職していることがわかり、住まいもひきはらっていた。
つきあって1年、週末同棲状態だった彼はなぜ何も告げずに消えたのか!?
優子が最初に思い出したのは、野球好きの彼が誘ってくれた「ベースボールクリスマス」なるイベントだ。
野球にまるで興味がない優子はその誘いを断っていたのだが……もしかしたら彼に会えるかも、いや会えなくても彼の気持ちを知りたい一心で優子はイベントに足を運ぶ。そして、生まれて初めてのキャッチボール体験を機に、優子は自分が彼に向きあうことをサボっていたと気づくのだ。
その日から、彼が残した手がかり――プロ野球の選手名鑑に記したメモや観戦チケットの半券を頼りに、優子の球場めぐりがスタート。
野球オンチながらに、お客さんや選手を眺めるうちに、少しずつ野球を愛する人の気持ちを理解していく。
趣味が一致することが恋人や友だちの条件ではないけれど……好きな人が好きなものの話を聞いてあげられたら、きっともっと理解は深まる。そして、もっと世界を見る目は広く、優しくなれるはず。
“彼氏捜し”から始まるちょっと変わった“球場女子”のストーリーは愛にあふれた野球&球場ガイドであり、希望に満ちた人間賛歌である。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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