365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
12月21日はバスケットボールの日。本日読むべきマンガは……。
『Buzzer beater』第1巻
井上雄彦 集英社 ¥1,514+税
バスケマンガのパイオニア的存在といえば、井上雄彦『SLAM DUNK』だろう。
「バスケマンガは当たらない」との世評を覆し、社会現象になるほどの大ヒットを記録し、世代を超えて、いまなお愛読されているスポーツマンガの金字塔だ。
それ以前にも六田登『ダッシュ勝平』などバスケを題材にしたマンガはあったが、本格的なスポーツマンガとしてバスケットボールにスポットを当てた作品となると、やはり『SLAM DUNK』の存在は大きい。
きょう12月21日は、1891年に世界で初めてバスケットボールの試合が開催されたことに由来して「バスケの日」とされている。
こんな日はやはりバスケマンガを読みたいところだが、『SLAM DUNK』ではなく、同じく井上雄彦が手がけた『BUZZER BEATER』にあえて注目したい。
『BUZZER BEATER』は、未来世界でのバスケを描いたSFバスケ作品だ。
地球で生まれたバスケは全宇宙で愛され、最高峰の宇宙リーグにはあらゆる異星人が参加し、そこでは地球人は活躍できずにいた。ストリートチルドレンだった主人公・ヒデヨシは、地球人選抜チームの下部組織にピックアップされ、そこでバスケの腕を磨きながら自身のルーツに気づかされていく。
本作はスポーツ専門のCS放送局「スポーツ・アイ ESPN」(現在の「J SPORTS」)のホームページ上で公開された。
連載開始は1996年。日本では前年11月にWindows 95が発売されたばかりで、まだインターネットの認知度が低かった時代のことである。“あの”井上雄彦が『SLAM DUNK』以来、ふたびバスケマンガを描くということで大きな話題となり、多くのファンが不慣れなパソコンとネットに悪戦苦闘しながら、ダイヤルアップでピ―――ッ、ンガ―――ッ、ティンティンティンと接続したのだ。
折しも2016年の『このマンガがすごい!』本誌のオンナ編では、pixiv発の『オタクに恋は難しい』が、WEBマンガとして初めてのランキング1位になったばかり。
「WEBで無料公開→のち書籍化」の流れも一般化してきたが、それを19年も前にやったのが『BUZZER BEATER』であった。つまり井上雄彦は、バスケマンガだけでなく、WEBマンガのパイオニアでもあったわけである。
「初めてバスケットボールの試合が開催された日」には『BUZZER BEATER』こそふさわしい作品だ。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama