人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、野田サトル先生!
さまざまな魅了を兼ねそろえる『ゴールデンカムイ』。前回はアイヌ、料理といった要素についてお話をうかがったが、今回は作品を彩るその多彩なキャラクターたちについて野田先生に語っていただいた。
そして野田先生の漫画家としてのこだわり、そしてルーツはいったいどこにあるのか。今、もっとも注目すべき作家の姿に迫った!
前回の記事はコチラ!
『ゴールデンカムイ』野田サトルインタビュー ウケないわけない! おもしろさ全部のせの超自信作!
キャラが立ちまくりな、多面的な登場人物たち
——先生の描くキャラクターは、みんなキャラが立ってますね。どうやってキャラを作っていくんですか?
野田 凶悪な囚人でも、どこか憎めない性格……、たとえばお茶目だったり崇高な部分があったりと、そういう多面的な性格にするようにしています。

無敵の第七師団を指揮する鶴見中尉。奇抜な言動が目立つが、散っていった仲間たちのため、軍事政権の立ちあげを目指すなど義に厚い一面ももつ。その多面性が魅力のひとつ!
——それはどうしてですか?
野田 いわゆる悪役が、悪役のまま終わるとか、レッテルを貼ったようなキャラが出てくるようでは作品の質が悪くなってしまうと思います。「変態を!」「もっと複雑な変態を描かせてくれ!」と思ってます。
——先生の絵、すごく動きがわかりやすいと思うんですよ。作画の際には、どういった点を心がけているんですか?
野田 線を少なく、かといって単純な絵にならないように服のシワなどで立体感を出しています。あと、デッサンにはけっこう気をつけてますよ。あんまり今風の絵じゃないのは自分でもわかってますけど……クソ食らえですね。男はゴリラみたいに男性ホルモンが強くなきゃかっこよくないと思います。胸毛とヒゲがつながっているような。
——よく「キャラが動く」って言うじゃないですか。野田先生の想定を超えて、勝手に動き出してしまうようなキャラクターっていますか?
野田 白石です。白石は『サザエさん』でいうところのカツオなんです。カツオの欲望や悪知恵で転がる話は、『サザエさん』に多いと思いますよ。僕は2006年ごろから『サザエさん』を録画してます。

コメディリリーフ的な役割を担うことが多い白石。しかし白石の脱獄スキルが、杉元の命を救ったこともあるのだ!
——先生がとくに思い入れがあるキャラクターはだれですか?
野田 二瓶鉄造ですね。主人公に考えていたくらいです。勃起。

野田先生お気に入り「悪魔の熊撃ち・二瓶鉄造」。その超男臭い姿に感化され、心のなかの“雄”が目覚めた読者も多いのでは!?
——結局、主人公は元軍人とアイヌ少女のコンビになりましたが。
野田 汚いオッサン猟師が主人公だったら、即打ちきりだったでしょうね(笑)。
——とくに気に入ってるシーンはどこでしょう?
野田 連続殺人鬼の辺見と杉元が殺しあう場面(コミックス5巻収録)はロマンチックだったと思います。勃起しながら描いたと思います。

愛を語らっているようだが、殺しあいの真っ最中である。まさに「男は拳で語りあう」の究極系!
——野田先生にとって、描いていて一番楽しいものってなんでしょう?
野田 ギャグシーンですかね。アシリパさんの変顔は、描いている自分が吹きだすまで何度も描きなおします。

ふだんは美少女なぶん、アシ(リ)パさんのヘン顔の破壊力は高い。これも一種のギャップ萌えなのだろうか。
——描きなおし……。たいへんそうですね。ちなみに原稿はアナログですか? わりと多いパターンとしては、「ペン入れまでアナログで、仕上げはデジタル」ですが。
野田 僕の場合は100%デジタルです。