日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ホブゴブリン 魔女とふたり』
『ホブゴブリン 魔女とふたり』
つばな 幻冬舎 ¥630+税
(2015年12月24日発売)
この作品のレビューを書こうとして、ふと手が止まってしまった。
言葉になんてしない方がいいんじゃないだろうか。
というより、はたして言葉で説明できるものなのだろうか……?
そんな気分になってしまうのが、つばなが描く『ホブゴブリン 魔女とふたり』という作品なのである。
主人公・ポーリーンはホブゴブリン、暖炉の妖精だ。
いつも不機嫌でどなってばかり、食べもののことばかり考えている年老いた魔女・バーバと2人、森のなかで暮らしている。
日々不思議な事件とめぐりあい、同じホブゴブリンのイモージェンと仲よくなったりしながらも、ポーリーンは毎日バーバの食べもの探しに一生懸命だ。
そんなある日、王女にかけられた呪いを解くために、魔女を探しに王国から従者が森にやってきて――。
いい意味で土臭い、素朴さを感じさせる絵柄と、まったく先の読めないストーリー展開。
それはたとえばアンデルセンやグリムといった、残酷かつ不条理を含んだ童話の世界を思わせる。
謎に満ちた森、奇妙な生き物たち。たわいのない日常的な会話の向こうにある、哲学的とも言える生の意味。
読みかえすたびに、前回まで読み取れなかった何かが、いつでもページに潜んでいる――そんな空気を持った、クセになる一冊だ。
……結局こうして言葉を紡いでも、字余りか字足らずになるばかりのようにも感じる。
ここはぜひ、現物のページをめくってその世界を味わってほしい。
にじみ出す独特の空気を、そして物語を読む幸せを、たっぷり堪能できますよ。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」