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『銀座からまる百貨店お客様相談室』第1巻 鈴木マサカズ(著) 関根眞一(原案協力) 【日刊マンガガイド】

2016/02/19


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『銀座からまる百貨店お客様相談室』


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『銀座からまる百貨店お客様相談室』第1巻
鈴木マサカズ(著) 関根眞一(原案協力) 講談社 ¥570+税
(2016年1月22日発売)


登場人物全員がド変態!?

舞台となるのは創業80年を誇る老舗「銀座空丸(からまる)百貨店」の“お客様相談室”。
購入した商品が壊れていたり、説明と微妙に違っていたりで、なんだかんだと怒り心頭の客たちから寄せられるクレームに対応する部署である。
せっかく大手百貨店に就職したのに、こんな部署に配属されたらだれだって意気消沈だ。

そんな超不人気部署に配属されてしまったのが主人公の木洩田一郎(こもれだ・いちろう)。
おつりが2円不足していただけでゴルフクラブを振りまわす老人や、「貴金属洗浄機にネックチェーンを入れたら壊れた。誠意を見せろ」と難癖つけてくるプロの輩、「2年前に買った毛皮が虫に食われたから交換しろ」と無茶を言うマダムなど、次から次に現れる難敵に気おされまくるのであった。

しかも、この木洩田には欠点が。緊張がピークに達すると思わず本音を口にしてしまうのだ。
謝罪をさせるために自宅に呼びつけられ、正座をさせられてこんこんと説教くらったら、そりゃだれしも「帰りたい」と思うのが普通だが、頭のなかでボヤくのと実際に口に出すのとじゃ大違い。
そんな言葉を耳にしたクレーマー……否、お客様がどうなるのかは、ご想像のとおりだ。

著者は『ラッキーマイン』『七匹の侍』など、一筋縄ではいかない作品を発表し続ける孤高の漫画家・鈴木マサカズ。
だからして、木洩田がクレームにしっかり対応してお客様との心をかよわせるハートウォーミングなストーリーになるハズもない。

冒頭にも書いたが、木洩田の同僚には曲者がズラリ。
あらゆるクレームに鮮やかな対応を見せる室長の銀崎千次は、知らぬ間に盗聴器をしかけたりする腹の底が見えない人物、先輩の框(かまち)怜子は怒られれば怒られるほど感じてしまうドM美女、さらに新人の水科さくらは、どんな相手にも動じないマイペースのオタク娘(ネット上では2ちゃん派の残党)といった具合だ。

言いたいことを言いまくるクレーマー天国のこんな世のなかじゃ、お客様相談室にもこのくらいポイズンな精鋭が必要なのかもしれない。

ベストセラーとなった『となりのクレーマー』の著者・関根眞一が原案協力で参加しており、しっかりとしたリアリティをともないつつも、ストーリーは鈴木流のナナメ上を行く展開に転がっていきそうで目が離せない!



<文・奈良崎コロスケ>
マンガと映画とギャンブルの3本立てライター。中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしている。著書に『ミミスマ―隣の会話に耳をすませば』(宝島社)

単行本情報

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