日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『不自由セカイ 完全版』
『不自由セカイ 完全版』
コダマナオコ 一迅社 ¥680+税
(2016年2月18日発売)
幸福と不幸の線引きはどこか。
それはいつだって、自分が決めた場所にある。他人が決められることではないのだ。
そしてそれは、自由と不自由の線引きとも似ている。
『不自由セカイ』――先輩と後輩の関係が、奴隷と主人に変わる時。
そこにあるのは、幸福か不幸か……?
だれもが見とれるほどかわいらしい女子大生・茗子(めいこ)。
高校生の時、茗子には憧れの先輩がいた。
ボーイッシュで端正、長身で爽やかで、態度も行動もまるで王子様のような女性。
その先輩の名前は礼央(れお)という。
礼央に憧れてテニス部にまで入った茗子。そして2人はたちまち仲よくなる。
だが、とある事件を経て、礼央は茗子の奴隷と化してしまった。
そんな2人の関係を、礼央の同級生である高瀬は不思議に思っていた。
なぜ礼央は茗子の命令に、すべてを投げ出してまで従ってしまうのか。
ある日ついに、高瀬は礼央にその疑問をぶつけるのだが……。
茗子は、罪悪感という鎖で礼央を自分に縛りつけている。
だれにでも覚えがあるだろう。罪悪感というのは強烈で、非常に逃れづらいしがらみなのだ。
しかしだからこそ、強烈なドラマが生まれる。特に女同士ともなればなおさらだ。
著者はそこにみごとにメスを入れ、どろどろした感情をえぐり出し、マンガのかたちで読者に突きつける。
読後感は、人それぞれ違うのではないかと思う。
共感、憧れ、苦さ、痛み……いずれにしても、茗子と礼央の2人が心をぐちゃぐちゃにしたように、読者の心をもかき乱す作品であることは間違いない。
自分は何を「感じる」か。
考えるのではなく、感覚や感情に重点を置いて、じっくり読んでいただきたい1冊だ。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」