日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『13月のゆうれい』
『13月のゆうれい』第1巻
高野雀 祥伝社 ¥680+税
(2016年2月8日発売)
『さよならガールフレンド』で注目を集めた新鋭、高野雀の最新連載。
小さい頃から「女であること」に違和感を抱いてきたネリ。現在も合コンで男から「もっとかわいいの着ればいいのに」と言われるたび、殺意と失望を感じている。
一方、双子の弟・キリは「男なのにかわいい」と言われることに苦しみ、唯一女装している時だけ解放される――。
ジェンダーに外堀を埋められ、人生をこじらせまくっている2人。
見た目は同じなのに「性」も「性格」も異なる彼らが「私たち本当は逆だったんじゃないかしら」と悩む姿は、なんとも皮肉でややこしいが、そこにゲイではないのに「女装したキリ」に恋してしまった周防が絡むことで、物語はさらにややこしく……。
唸らされたのが、女装に後ろめたさを感じているキリに、ネリの友人が言い放つ「要はシンデレラみたいなもんでしょ。冴えないなとか 抜け出したいとか思ってるとこに 魔法で自分の最高のポテンシャル引き出されて やばい自分ここまで行けるってわかってさ 絶対気持ちよかったと思うんだよね」という言葉。
なるほどファッションとは楽しいだけじゃない、ハードな世の中に立ち向かうための武装でもあるよなーと、しみじみ。
「靴が合うまで気づいてもくれなかった相手と結婚して幸せになれたのかな?」と疑問を抱くネリと「靴は完全に合うけど見覚えのない女の子が現れて、それでも王子はその子を受け入れたのかな?」と悩む周防。
微妙に食い違う、2人のシンデレラ解釈も興味深く、いびつな彼らの三角関係から目が離せない!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。『音楽マンガガイドブック』(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン『上村一夫 愛の世界』編集発行。
Twitter:@superpop69