365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
3月12日はくまモンの誕生日。本日読むべきマンガは……。
『犬神もっこす』第3巻
西餅 講談社 ¥500+税
本日はゆるキャラ(ご当地キャラ)の代表格、熊本の「くまモン」の誕生日である(年齢はヒミツ)。
そのインパクトある容姿と意外にも俊敏な動きで大ブレイクし、日本だけでなく世界でも人気を誇り、なんと天皇皇后両陛下と謁見する身分にまでなったのは周知のとおりである。
も装丁含めてほのぼの&かわいいくまモン本人(?)が主人公のカラー4コマ『コミックくまモン』もおすすめだが、今回はくまモンに執着する男子学生が主人公のギャグマンガ『犬神もっこす』を紹介しておきたい。
「もっこす」は、熊本県民の頑固な気質を表す言葉「肥後もっこす」が語源。
九州の北方(きたかた)大学に通う犬神宗(いぬがみ・そう)は感情が乏しいうえ、本音をさらけ出しすぎてなんともズレた言動をする変人であり、それを自覚し孤独に甘んじていたが、まったく向かなそうな演劇研究会に入部することに。
演技に活かすため恋愛経験を問われた犬神君は、くまモンへのフェティッシュなまでの愛を語りだし、指導者を困惑させる。
さらに第3巻では「熊本県の営業部長」として公務員の肩書きを持つくまモン(※現在は「しあわせ部長」も兼務)と甘酸っぱい社内恋愛を育むべく、県庁職員を目指していたことも明かす。
その淡々とした語り口なのにやたら具体的な妄想(あの姿のままのくまモンと、無表情な犬神君が初々しくデートをする絵面がシュール!)が爆笑もので、犬神君の逸脱ぶりを際立たせる。
ちなみにくまモンは「オスじゃなくて男の子」なのだが……。
ほかにも金銭が絡むと人格が豹変したり、危険な仕掛けのある大道具を気軽につくったりと、某少女演劇マンガとは違うベクトルで「おそろしい子!」とつぶやきたくなる。
ところで、なぜ本日がくまモンの誕生日なのかというと、もともとくまモンが、九州新幹線全線開業に際して、通過点である熊本にも降り立ってもらうために魅力を伝えよう、とのプロジェクトが発端で生まれたキャラであることに由来する。
その開業の日こそが、2011年3月12日。そう、あの東日本大震災の翌日でもあった。
未曽有の災害の直後ゆえに当日のセレモニーは簡略化され、華々しく登場するはずだったくまモンは、活動を自粛せざるをえなかったのだ。
一見、順風満帆にスターの道を走ってきたくまモンだが、人生(?)最大の晴れの日を奪われたつらさを背負っている。
そんな目線でくまモンを見ると、あの無邪気でとぼけた顔の仮面の下には悲哀が隠れているのではないか……。
えっ、「仮面」じゃなくて「着ぐ○○」? だれですかそんなツッコミをするのは!?
くまモンはくまモンです! 中の人など、いませんよ!!
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。
くまモン関連のイベントをチェックし、熊本まで行った程度にはくまモン好き。