日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『猫まち主従』
『猫まち主従』第2巻
玉置勉強 講談社 ¥600+税
(2016年2月9日発売)
引っ越してきたのは2人。
描かれているのは、ごく一般的な、なーんでもない日々。
ただしそれが、上流階級の少女と、去勢された男性だとしたら。引っ越してきた2人が何者なのか、どうしても興味がわいてしまう。
2人は「猫」ではあるが。
自立しようとするお嬢様のダオ。彼女のもとで従うのはクロスケ。
ヒエラルキーの頂点と、最下層だ。
クロスケはいうなれば、中国の宦官。お仕えするために、「間違い」が起こらないよう去勢をほどこされてされている。
そんな若い2人が同居するとなれば。
庶民なら、「どういうご関係?」と首を傾げてしまうのもしかたない(失礼だけどね)。
舞台を「猫日本」にすえて、猫の生態をなぞらえながら、人間関係や性のあり方を、かなり深く掘り下げている。
ダオには発情期がある。クロスケにはない。好きで仕えているのと、性のパートナーとしてともにいるのは別ものだ。
お嬢様側はクロスケには気を許しており、だらしなくパンツ1枚でうろうろしている。
部屋でゴロゴロする、楽しい「どうでもいい日々」を送るダオ。
しかし、性欲があるものとないもの、恋人ではなく主従、このままで将来どうするのか? という不安はある。
キモになるのが、2人のワケに詮索してこない、けれども気を使ってくれる、ひとり暮らしのナオさん。
スペイ(避妊手術済)で、地域のニューター(去勢済)差別や、階級社会の生きづらさを、そっと教えてくれる。
ダオとクロスケの日々は、本当に何もないまま、2巻で終わる。
しかしナオさんの話しぶりを見ていると、何もないまま暮らせることがいかにすごいことなのか、しみじみ感じさせられる。
そして、第三者が見るカーストや性差なんて、本人たちが幸せなら、じつはたいしたことないのもわかる。
また次の発情期がきたら、クロスケが優しくぎゅっと抱きしめてくれるのだろう。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」