日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『プリンセスメゾン』
『プリンセスメゾン』第2巻
池辺葵 小学館 ¥552+税
(2016年2月12日発売)
居酒屋で社員として働く女子・沼越さん(独身・年収250万円ちょっと)が“運命の物件”に出会うため、モデルルーム巡りをする様を描いた『プリンセスメゾン』。
沼越さん以外にも、フードコーディネーター、モデルルームの受付嬢、テレフォンアポインター、子育て中のママさん、ファッションライター……など、様々な女性たちが、それぞれの理想の家を追い求める姿が、毎回読み切り形式で描かれてゆく。
「理想のおうち」といえば、どこか甘い夢のようなイメージもあるが、都会で女がひとりで生きてゆくということは、金銭的にも精神的にも、なかなかハードボイルドなことでもある。
しかし、だからこそ、彼女たちの「住まい」への思いは切実で、現実的な柔軟性を持ちながらも、だれにも譲れない揺るぎない種類のもので。
これまでにも著作を通じて、孤独な人々のささやかな日々をほのかに照らす、祈りにも似た思いを描いてきた著者だが、本作を読んでいると、女にとって「住まい」とは何なのか、あらためて考えさせられずにいられない。
たぶん、恋人がいても、家族ができても、人にはだれにも足を踏み入れることのできない「わたしだけの聖域」が必要で。
そんな孤独で愛すべき場所があれば、これから先、どんなにつらいことがあっても、きっと大丈夫と思えるのだ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69