日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ロメオがライバル』
『ロメオがライバル』第1巻
秀良子 小学館 ¥552+税
(2016年2月12日発売)
引きこもり青年・アキラがついに母親の逆鱗に触れ、放りこまれた先は、叔父が経営する牧場。
虚弱体質&コミュ障な彼が、人里離れた陸の孤島の牧場で、はたしてこの先、生きのこることができるのか!?
物語はそんなアキラ青年と、牧場に通うボーイッシュな乗馬女子・寿里の出会いをきっかけに2人のラブコメ模様が描かれる点かに思えばさにあらず。
寿里ちゃんのほうは、気象が荒く容易に心を許さないが、そのぶん、認めた相手なら最高のパートナーになれる雄馬のロメオのほうに夢中。
また、アキラくんのほうも、世話を任された小柄で繊細な雌馬のいすずちゃんとどう距離を縮めていくかで精いっぱい。
このマンガ、人間と同じぐらい馬や動物のキャラが立っていて、じつに個性豊か。特に、いすずちゃんのかわいさなんて、その数奇な運命も相まって、現状、圧倒的なメインヒロイン力(りょく)である、マジで。
そんなわけで、タイトルどおりロメオとアキラが寿里をめぐる恋のライバルになるのはまだまだ先になりそう。
けれども、引きこもり青年が、少しずつ少しずつ段階を踏んで、牧場での仕事や馬という生きものになれていくゆったりとした時間感覚は心地よく、ひとときの牧場体験を味わえるマンガになっている。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas